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ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

44.バスの遊泳能力はどれほどなのか?

Convenient Analysis of Swimming Mechanism of Largemouth Bass Using Digital Video Cameras
( Matsunaga(近畿大学)ら,Fisheries Engineering VoL 41 No, 3, pp.245-250, 2005 )

これまでも「※1 バスの遊泳能力はアユに及ばない」とか、「バスは長距離を早く泳げない」などと書いてきたが、本当にバスの遊泳能力は他の魚より劣っているのだろうか。本研究ではバスの遊泳能力をデジタルビデオカメラで観察することにより解き明かしている。

※1 例えば「9.琵琶湖野田沼周辺におけるオオクチバスとブルーギルの胃内容物と糞中DNAによる摂餌生態の推定

近畿大学のMatsunagaらは、オオクチバス通常状態での遊泳(Steady swimming)と、瞬間的遊泳(Burst swimming)のメカニズムをデジタルビデオカメラにより解明した。

実験ではオオクチバス9匹(体長 11.0~25.5cm)をサンプルとして実験水槽に人工的な流れを生じさせた状態で遊泳させ、デジタルビデオカメラにより撮影した。実験水槽での流速は 0.14~0.57 m/sec。この速度でサンプルのバスは一定時間泳ぎ続けており、泳ぐバスの尾びれの振動数と振幅を測定した。

遊泳速度と尾びれの周波数の関係をFig.3に示す。図における各マークはサンプルバス別に支援しており、例えば●は体長11.0㎝、□は25.5㎝のバスのデータを示す。
遊泳速度の単位はTL/sec、ここでTLとは体長を示す。例えば最右上の●点は体長11.0cmのバスであり、4.5 TL/secであるから速度は
 4.5*11.0=49.5 cm/sec
を示し、その時の尾びれの周波数は8.2 Hz となった。
同様に最左下の□点は25.5cmのバスであり、遊泳速度は1.0 TL/secであるうから速度は
 1.0*25.5=25.5 cm/sec
を示し、その時の尾びれの振動数は 2.5 Hzとなった。□マークの最大値を見ると、このバスが振動数 5 Hzで尾びれを振った時で、その速度は 2.2 TL/sec、即ち
 2.2*25.5=56.1 cm/sec
これは実験における最高流速に他ならない。

44-Fig3.jpg
Fig.3 (標記文献より)

この遊泳速度:vと尾びれの振動数:TBFの関係を線形近似すると、
 TBF=1.21*1.66V
となる。

流速を増していくと、バスは定常的な遊泳状態を維持できなくなり、早い泳ぎと定常遊泳を繰り返すようになる。この境界域は 1.88±0.24 TL/secであった。イメージできるだろうか。流れに乗り遅れまいと何回か尾びれを激しく振ってから、またゆったりとした泳ぎに戻る事を繰り返すのだ。この特性は多くの魚種で観察される。
1.88 TL/secは11.0cmのバスでは20.7cm/sec、25.5cmのバスでは47.9cm/secに相当する速度である。

このような状態はバスにとっては居心地がいいとは思えないので、バスはこの境界域以下の水流にいたいのではないか。すると30cmのバスなら30*1.88=56.4 cm/sec 以下の流速の水域を好むと考えられる。そして大きなバスほど早い水流に対応できることになる。


次に同実験における遊泳速度と尾びれの振幅の関係を求めた。Fig.4に示すグラフでは遊泳速度と尾びれの振幅に強い相関関係は表れていない。これは南洋マグロでも確認されており、これらの魚では遊泳速度は尾びれの振動数に強く相関している。

44-Fig4.jpg
Fig.4 (標記文献より)

次にバスの捕食時の瞬間的な遊泳速度を測定した。
試験水槽に餌を投入した際には、バスは急激な遊泳(Burst swimming)を示す。その時の遊泳速度の時間変化をFig.6に示す。サンプル魚は体長17.0cm。餌である金魚にアタックする時には最大5.8 TL/sec=98.6 cm/secの速度で瞬間的に泳ぎ、その際の加速度は11.0m/sec2であった。しかしその高速遊泳は瞬間的でありせいぜい0.5sec、餌を捕食した後は再び餌が投入させるまで定常状態に戻る。Fig.6中の↓は餌の投入時刻、↑はバスのアタック時刻を示す。餌は繰り返し投入されたが、バスは餌の投入に驚いて瞬間的に強く遊泳した後、2~5sec後にアタックしている。

44-Fig6.jpg
Fig.6 (標記文献より)

バスはパイク等と同じく、Ambush predatorと呼ばれる。直訳すれば「待ち伏せする捕食者」(なんかカッコ悪いな)。Ambush predatorは通常はストラクチャの陰に潜み、餌が近づいてきた時に瞬時に高速で泳ぎ餌を捕食する。しかし持久力はない。
ここでのサンプルは17.0cmという子バスだったが、定常遊泳の観察結果で表れているような遊泳速度とTLとの関係が、瞬間速度でも成り立つと仮定すれば、40cmのバスは瞬間的に
 5.8*40=232 cm/sec
の速度でアタックすることになる。0.5secの一瞬の動きであったとしても、116cmは移動することになる。

瞬間的な速度についてはピンとこない処もあるだろうが、ウサイン・ボルトの初速が4.01m/secと言ったらどうだろう。バスはボルトの1/5の小さな体でボルトの半分以上の瞬間速度を叩き出しているのだ。しかも水の中で。
では水泳の世界記録はと言うと、50m自由形で 20.91sec。この時の平均速度は239.1cm/sec。40cmのバスは2m近い大男達と同じ速度を出すのだ。でも彼らは飛び込んでいるから。静止した状態から壁キックもなしで加速しろと言ったら、とてもじゃないが瞬時に239.1cm/secなんか出る訳がない。
バスの瞬発力はもの凄いのだ。


では、これらの情報を釣りのタクティクスに落とし込んでいこう。

我々がバスのアタックを目撃するのは、主に見えバスがルアーに気づいて近づいてバイトする場面だろう。その時のバスはゆっくり近づいてパクっと食いつく感じだ。思うにあれは本気の捕食のためのバイトではない。いわゆる「口を使う」状態。人間であれば「なんだこれは」と手を伸ばした状態なのではないだろうか。
Ambush predatorの本領は、バスに気づかずに近づいてきたベイトを一瞬でアタックする時だろう。その時のバスは上記のように2m/secの高速で瞬間的に遊泳し、大きな口を開けてベイトを吸い込む。その移動距離は1m近くなる。
この移動距離については別途検討したいが、ルアーとしてはそこまで想定した動きをすることだろう。つまりバスが潜んでいると思われるポイントの1m以内のレンジでは、いつバスがアタックしても不思議はない。そのつもりで操作する。逆に多くのプロがやっているような、ポイントにダイレクトにルアーを落としていく方法はいかがな物だろう?fig.6でも生き餌投入の瞬間、バスは驚いて瞬間遊泳を行っている。もちろん試験水槽内と実際のフィールドでは異なるだろうが、無用な刺激を与えないに越したことはない。少し離れたところに着水させてから、ポイントに近づけるというアプローチが可能であるならば、そうした方法を取る方がよいと考える。

もう1点。クランクベイトやスピナーベイトを操る時のイメージについて。あなたはどのようなイメージをしているのか?泳いでいるベイト(すなわちルアー)にバスが後ろからついて泳いできて、どこかでたまらなくなって後ろからガブリとやる。そんな感じでしょうか。
前述のようにバスはAmbush predator。通常はそんな捕食の仕方はしない。自分の潜んでいるストラクチャーの近くに来たベイトに瞬時に襲い掛かるのだ。

ちなみに多くのリールの巻き上げ速度は70cm/1回転。ルアーの移動速度は意識しながら操作していると思うが、Fig.3で表された定常遊泳速度は最大でも50cm/sec程度。皆さんの操作しているルアーは、バスにとってはかなり早いのかもしれない。バスプロもよくやっているよね。最初にサーチすると称してスピナベ等を早いリーリングで泳がせている。リールの回転速度は毎秒2回転くらい。あれでバスが掛かった処をまず見ない。掛かったとしてもただのラッキーだろう。そんな速度で後ろから長距離を追跡してアタックできるバスはいない。アタックしてきたのは、その近くにたまたま潜んでいたバスが、下からバイトしたのであろう。

このようなバスのベイトに対する捕食形態については「11.コクチバスによって捕食されるウグイの最大体長」で述べているので参照されたし。

バスの捕食形態から考えれば、引き物系のルアーは、バスの潜むストラクチャーに絡ませるのが必須条件となる。潜んでいるバスに近づいてしまったベイトのイメージ。ならばストラクチャまでのルアーの移動は迅速でいい。ストラクチャー近くでもバスのアタックスピードを考えれば、そんなにゆっくりリトリーブする必要もない。そこはその日のバスの反応次第だ。
そうではなくオープンな水域にクルーズしているバスを掛けたいのなら、バスの定常遊泳速度を意識したスローリトリーブが必要になる。かなり遅いよ。リール操作は毎秒1/2回転くらい。


どのような状態のバスをどう釣りたいのかによって、ルアーの操作法が違ってくる。当たり前の事がこのような研究から明らかになるのだ。

43.環境DNAによる水生生物調査

前回「42.湖の水コップ一杯でそこに棲む魚が分かる!」に引き続き、環境DNA分析と言う新技術に基づいた調査について取り上げる。今回は国内の河川湖沼における調査結果の例を紹介したい。

(1) 江の川における環境DNA分析を用いたアユの定量化と生物量に影響を与える環境要因の検討
(乾ら(山口大学),土木学会論文集B1 vIL73,No4, 2017)

山口県の江の川上流域の複数個所からサンプリングした水により環境DNA分析を行い、場所毎のアユの生息密度を求めた。これとオオカナダモ等の環境に影響を与えると思われる外来種との関係を求めた。また溶存態無機窒素、リン等の濃度や標高、流速、水深等も測定された。
観測箇所は全19か所。これを従来の方法で調査したと考えたら、とてつもない時間と労力が必要だっただろう。環境DNA分析開発の効果は絶大だ。

43-Fig1.jpg
右上が下流となる(標記乾らから引用)

調査結果によるとアユのDNA濃度は上流ほど、標高が高くなるほど大きくなる傾向が見られたが、流量や水深とは無関係。そして最も注目されたオオカナダモの被度(どのくらい水面が覆われているか)とも無関係であることが判明した。
ヒステリックに外来種撲滅を叫ぶ集団にとっては冷や水を浴びせられた格好になってしまった。


(2) 在来希少種カワバタモロコの環境DNAによる検出系の確立
(福岡(神戸大学)ら,日本生態学会誌 66 ,2016 )


福岡らは、レッドリスト登録されている在来希少種カワバタモロコについて、兵庫県内のため池における生息確認手法として環境DNA分析が応用可能であるかの検討を行った。
兵庫県内にはため池が40000以上あるが、その内カワバタモロコの生息が確認されている池はわずか30しかないと言う。それらの真偽確認が大きな目標となる。

福岡らは人工的に作ったサンプル池での確認実験を経て、カワバタモロコ生息確認方法として環境DNA分析の有効性を確認した後、フィールドワークとして下図の81地点を選んだ。
43-Fig2.jpg

その結果を下表に示す。カワバタモロコのDNAが検出されたのは、宝塚市で1か所、神戸市北区で2か所等の計6か所のみ。それら6か所について実際にわなを仕掛けカワバタモロコの捕獲を試みると6か所中の5か所からカワバタモロコが捕獲された。
残りの1か所については追調査が必要だが、環境DNA分析はカワバタモロコの生息調査に有効であると結論づけられた。

43-Table1.jpg

上記の乾らの調査と同様にここはもう一歩踏み込んで、影響が疑われるオオクチバスブルーギルの生息の有無を同時に環境DNAにより分析してほしかった。
サンプリングしたDNAは1週間ほどで紫外線等により分解されて再調査不能となるため、同時に狙いを定めた分析が必要となるのだ。


(3) 環境DNAを用いた山口県内2級河川におけるヌートリアの侵入状況と生息適地の把握
(赤松(山口大学)ら,応用生態工学21(1) ,2018 )

赤松らは山口県内20水系87地点を対象に採水し、環境DNA分析によるヌートリアの生息調査を行った。その結果を下図に示す。

43-Fig4.jpg

既に調査地域20水系のうち14水系にヌートリアは生息していたのだ。
このような調査は環境DNA分析ならでは可能となるものだろう。従来方法で「ここにはヌートリアは一匹もいない」ことを証明することの困難さは容易に想像できる。
またヌートリアのDNAが高濃度に検出された地点の写真を見ると、コンクリート護岸ではなく植生を持つ川岸であることが分かった。岸に穴を掘って巣を作るヌートリアの生態と合致する。

43-Fig3.jpg

このように環境DNA分析は急速にその応用範囲を広げていて、今後様々な分野で活用されるだろう。個人的には、
・在来種生息数とバス・ブルーギル生息数の相関調査
・国外外来種の未侵襲湖沼の確認と保護(特に北海道)
・琵琶湖等で行われている外来種撲滅作戦の効果の程

なんてのをやってほしいな。

42.湖の水コップ一杯でそこに棲む魚が分かる!

環境DNA分析の野外調査への展開

なんともすごい世の中になったもんだ。DNA分析のことである。
思い返せば、人のDNA配列を解明しようという壮大な計画:ヒトゲノム・プロジェクトがアメリカで開始されたのが1990年。元来15年で解析する計画だった30億ドルを掛けた大プロジェクトは、結局たった10年で全DNAの解析に成功する。30億塩基対の配列情報の解明には、国際的な研究協力と、急激な解析方法の進歩が必要だったが、研究者達はそれを成し遂げ、今や誰でもネット経由でその情報にアクセスすることができる。
京都大学化学研究所ゲノムネット
  https://www.genome.jp/ja/about_ja.html


そしてDNA研究はあらゆる生物の情報解析に向かう。ネズミもトリも魚も虫も。そこにはフナやウグイやバスも含まれている。その最先端の一つが「環境DNA分析」。例えば魚からは分泌する粘液や糞等の排泄物に、それらのDNAが含まれている。犯罪捜査ドラマでおなじみの、唾液の付いたコップから犯人のDNAが抽出できるという、アレである。
そしてそして、今やその精度は、湖のコップ一杯の水からそこにどんな魚が住んでいるかを推測できるレベルになったのだ! 採取した水に含まれるごく微量のDNAを濃縮し、分析に足る濃度に高めた上で塩基対配列情報を策定していく。

<研究最前線>魚を獲らずに生態調査!「環境DNA」が注目される理由
https://m-hub.jp/biology/1670/93-1


すごいでしょ。コップ一杯の湖の水からそこに住む魚種や大まかな生息数が推定できる。
上の記事に登場する龍谷大学 山中氏の標記研究を見ていこう。
環境DNA分析という手法が登場したのは2008年、まだ生まれてから10年の若い技術だが、その応用範囲は急激に世界レベルで広がりを見せている。欧米では主に外来種の同定に応用されており、フロリダ湿地帯でのビルマニシキヘビ検出や、イギリスでのウシガエル検出が行われた。逆に希少種の生息確認を目的として、日本国内でオオサンショウウオやカワバタンモロコの検出が行われた。分析は湖沼・河川が中心だが、海の沿岸部においても数々の調査研究が進められているのだ。

その手法はあっけないくらいにシンプルだし、分析装置も巨大で高価なものとは思えない。いや、本当は素人には分からない複雑で高い技術を要するものなのだろうが、下に表されている手法はまさにあっけない程だ。

分析手法
                (標記 山中らから引用)

DNA分析のための詳細な手法を著者は本論文で紹介しているが、ここでは説明は避ける。第一、私がちゃんと理解できていないし。いずれにせよ上図のどの方法でも用いる装置は小さくて、複雑そうには見えない。そこがいいんだろうね。

だからこそ急激に環境DNA分析が世界中に広まったのだろう。著者の紹介紹介している論文だけでも2015年だけで約30件、その対象はブルーギル、コイ、ブラウントライト、アブラハヤ、ハクレン、etcetc。実に多様だ。そこでは水生動物だけでなく、陸生の動物の糞が河川に紛れて検出される例もある。
このようにして、その地に何が生きているのか生きていないのか、大げさな捕獲作戦を展開する必要もなく把握できる。特に今まで「生きていない」ことを証明することは容易ではなかった。いわゆる悪魔の証明だ。ネッシーは絶対にいないことを証明するためには、ネス湖の水を全部干さねばならなかったのだ。ロンドンブーツ、やってみる?
これが環境DNA分析の登場で一変する。例えば吉野川水系にニホンカワウソが生息していないことは、ニホンカワウソのDNA解析結果と比較すれば、吉野川の水コップ一杯で証明されるのだ。例の対馬のカワウソがニホンカワウソではなかった件は、糞を直接分析したので環境DNAとは呼ばない。

じゃあネッシーは? ネッシーのDNAが入手できれば一発だよ。誰か採取してきてくれる??
真面目な話、ネス湖の水に含まれる環境DNAが全て既知の生物のものであり、他の謎の生物のDNAが検出されなければ、謎の生物すなわちネッシーはいなかったと証明できるだろう。それも大変だろうけど。。。


では次回、日本で行われた環境DNA分析の結果を、何例か紹介していこう。

外来生物 2020問題を考える-4:喰うか喰わせるか!

前回の「2020問題を考える-3」では、これまでの議論と生物多様性国家戦略の問題点について分析した。そして私個人としては、外来生物被害予防三原則ならびに生物多様性国家戦略は、その理念と精神には大いに賛同するものの、個別目標の一つである「2020年までに優先度の高い侵略的外来種が制御又は根絶」には賛同しかねる事を述べた。
その理由として、上記の生物多様性国家戦略にうたわれた個別目標が、現実性と経済性を熟慮した科学的アプローチなどとは無縁の政治的判断と言わざるを得ないからであると主張した。

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ではどうすべきか。国として、などという大きいことを言うつもりはないが、一釣り人としてどうしていくべきなのか。まとまらない頭を整理しつつ、ツラツラと書いていきたい。

私の意見は揺るがない。
・外来生物の違法放流には断固反対。
・外来生物の繁殖・増殖にも反対。

そしてもう一つ、加えるに
・バスを無為に殺したりしない。

バスとは限らない。生きとし生けるものの命をただ奪う、ゴミ箱に捨てて焼却する、岸に打ち捨てて無駄に殺す。そんな事が許せないのだ。この点が釣り団体やバスプロ、多くのバサーの立ち位置とは少し違うだろう。私は Catch & Release 禁止でもいいと思っている。バス釣り禁止ではないのだから。それは禁止されようが許可されようが、アユやタイはリリースしない事となんら変わりはない。釣りとしてはごく自然な形態だ。
すなわち命を活かすのならCatch & Release 禁止は受け入れる
我々は他の生物の命を奪って己の命を繋いでいる。それは自然なことだ。魚を釣っておいしく戴く。アユやタイでできていることが、なぜバスではやらないのか?

これはバサーに問いたい。あなたはなぜバスをCatch & Release するのか?

バスフィッシングは Catch & Release がルールだから。」
本当にそうなの? あなた、そんなに暗黙のルールを守るいい子なの? バサーの品格、特にバス番組で無駄に騒いでいるバカプロ(あっバスプロでした)なんかを見ていると、ほとんど社会不適合者ばかりだけどね。そんないい子たちが漁港を荒らし釣り場をゴミだらけにしないと思うよ。
私がバス釣りを始めた頃、すなわちまだバスが日本に居ついたばかりの頃にはまさにそう叫ばれていたよ。常見忠師匠の本にも書いてあったし、我が開高健先生もモンゴルの大草原で巨大イトウを釣り上げた後、
チンギスハーンのものはチンギスハーンに。モンゴルの魚はモンゴルに。
なんてかっこいい事を言いながらリリースしていた。(「開高健の続モンゴル大紀行」より)

それに憧れた中学生がCatch & Release を心に刻んだとて不思議ではあるまい? じゃあ川辺で変な造花の棒を振り回して叫んでいるバスプロは?どうしてリリースするの?

バス業界のためバスを増やしたい。もっと大きくしてまた釣りたいから。」
プロや業界の人間はそう思うだろうな。素人衆もそうなのかな? だったらアユやタイでもリリースしそうなものだけど・・・
ヘラブナは完全にそうだよね。バス以上に完全にゲームフィッシュだし。ちなみにヘラブナもまた、ほとんどの地方では立派な国内外来種だから。元々その湖にいたなんてことはまずない放流魚だから。さあ、これからヘラブナがどう扱われていくかにも注目しよう。

釣ったはいいけど始末に困る。食べられないし、飼える訳でもないし。」
正直、これが本音だろうな。アユもタイもおいしく食べられるからリリースしないんだよね? いわば海で釣れちゃう外道、それもゴンズイやフグみたいな嬉しくない外道と同じなのだ。

だったら食べればいいじゃん!
食べられるようにすればいいじゃん!!
少なくとも、食べさせればいいじゃん。


ブラックバスを食べたことありますか? 芦ノ湖のバスは文句なくおいしい。湖畔で釣り&キャンプをして、バター焼きで食べたバスはうまかったよ。
湖畔のレストランでブラックバス定食なんて出しているくらいだから、問題なく食べられる。元々そういう魚なのだ。例えば芦ノ湖畔のほん陣。琵琶湖博物館内のにほのうみ

これが榛名湖のバスになると臭くて食べられたものじゃなくなる。同じようにきれいな湖水をしているのに。
なぜか? 榛名湖のバスは腹にワームを溜め込んでいるから。バスを捌いた途端に臭い匂いが鼻をつく。食べるのをあきらめて捨ててしまった。ごめんね、バス君。

ここでふと思ったことがある。
琵琶湖のバス回収Boxのバス達はどうなるんだろうう。建前上は飼料に加工して養殖魚や家畜の餌になることになっている。私的にはバスの命を他の魚や家畜に与えており、ギリギリ許容範囲かな。家に持ち帰って猫の餌にするなんて、全然OK!
しかしバスの腹に溜まったワームはどうしているんだ? まさか全部粉砕して家畜や養殖魚に与えているんじゃないよね? そんなことをしたらプラスチックが永遠に生物の体を循環することになる。
ちゃんと捌いて腹ワタは処理しているんだよね? まさか飼料に再生するなんて大嘘で、焼却しちゃっているんじゃないよね???


さて食べられないからリリースする派の人達に提案する。
だったら誰でも食べられるようにすればいいじゃん。食べたくなるような魚にすればいいじゃん。簡単なことだ。

・ワーム禁止

それだけでバスはうまくなる。加えて湖底に打ち捨てられるワームもなくなる。バスフィッシングはハードルアーとワイヤールアーオンリー。な~に簡単さ。50年前に私がバスを始めた頃に戻るだけだ。「ルアーフィッシング黎明期」にも書いた通りだ。

できればハードルアーも木製オンリーになるといいね。そうすれば残念ながら根がかってしまったルアーでも、数年で自然に帰る。それに高価なルアーなら釣り人も必死で回収するでしょ。ワームなんかすぐ捨てちゃうもんね。
エコタックルとか言っているJBさん、割高のでかいだけのプラスチック製プラグを売っているメーカーさん、考えてみてはいかが? プラスチックのでかいだけのルアーを5000円以上も払って買うくらいなら、手の込んだ木製ルアーを10000円で買いたいな。

エコタックルにしてもJBプロの中には「トーナメントでは義務付けられているから使うが、それ以外では使わない」とかしゃ~しゃ~とブログに書いている人間がいたりして、何のためのエコタックルなのか子飼いのプロ達でさえ納得させられない状況だ。

なので己の今後のスタイルは決まった。

ハードルアー一本!

釣りは難しくなるかもね。いいじゃないか。バス釣りはもっと難しくていいんだ。

外来生物 2020問題を考える-3: 賛成・反対がっぷり四つ!

前回の「2020問題を考える-2:生物多様性国家戦略」までで、外来生物をめぐる2020年問題の背景と概要を述べた。そして私の予想として
・滋賀県条例と同等の条例が全自治体で制定される。
・バスのリリースは禁止される。

と言う暗い将来を挙げた。

生物多様性の根本理念について異論を唱える人は(少なくともマトモな人間には)いないだろう。ジャングルを際限なく焼き払い畑にする、サンゴ礁をどこまでも埋め立てて基地にする、アマミニクオウサギの住む島にマングースを放つ、ヤマメやイワナの泳ぐ清流にスモールマウスバスを放流する。そんなことを際限なくやっていたら地球はどうなってしまうか。マトモな人間なら分かるはずだ。
しかしここで「総論賛成 各論反対」という人間が現れる。それも山ほど。私もその一人かもしれない。

「そりゃあサンゴ礁は大切にするに越したことはない。しかし辺野古の基地移設は防衛上も外交上も必要なのだ。そのためにサンゴ礁やジュゴンを犠牲にするのは致し方ない。」
「そりゃあアマミノクロウサギが天然記念物なのは承知の上だ。しかしハブの被害を軽減するためマングースは必要だ。クロウサギは絶滅なんかしないだろう。」
「そりゃあスモールマウスバスは元々住んでいた魚達を食べるだろう。しかしバスによる食害なんて大した問題ではない。釣り業界の権益と釣り人の自由を奪うな。」

私はここまで愚かではないつもりだが、生きとし生けるものとしての外来生物の命の尊厳(大げさな言葉だ)を踏みにじってまで守るべき多様性って何だ、とも思う。
なので、生物多様性国家戦略で示された
2020年までに優先度の高い侵略的外来種が制御又は根絶
という文言を見ると怯んでしまう。

こういう時には原理原則に立ち戻ろう。

外来生物被害予防三原則
1.悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
2.飼っている外来生物を野外に捨てない
3.野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない


まったくその通りだ。どの条文にも全面的に賛成する。
日本各地にフロリダバスを放ち、北海道にまでスモールマウスバスを違法放流する人間は、いったい何を考えているのか? コソコソと暗闇でバスを放流し、ネットの陰に隠れて理屈にもならない中傷を繰り返す。恥ずかしくないのか。そういう人間は顔を明かして公の場で議論してみるがいい。

私の意見は揺るがない。
・外来生物の違法放流には断固反対。
・外来生物の繁殖・増殖にも反対。

何度も言うがバスフィッシングはもっと難しくていい。必要ならば金が掛かってもいい。
そう思っている。JBや全釣り協がいやいやながら外来生物法を守ります、と言っているのとは訳が違う。本心からバスをこれ以上増やすべきでないと考えている。

バス擁護側の意見を少し紹介しよう。これが意外なほど黙り込んでいるのだ。特定外来生物被害防止法の成立直後の2005年から数年間は、キャンペーンと言えるほど大々的にバス擁護論を展開してきたJB日本釣振興会もここ数年は無言を通し、「ルールには従いましょう」と呼びかける。公的団体としては当然と言えば当然なのだが、なんとも弱腰だ。
 
かの今江克隆も外来生物法成立前後は勇ましくアジっていたのだが、最近は・・・

その論調は「バスを守れ。釣り人の自由や業界の権益を確保しろ。」と叫ぶばかりで、釣り人以外の人達に訴求できるポイントを欠いていた。これでは生物多様性を守るという御旗の前では無力だろう。


一方で2012年策定の生物多様性国家戦略には、
「2020年までに、侵略的外来種及びその定着経路が特定され優先順位付けられ優先度の高い種が制御又は根絶される。」
と明記されている。そしてその「優先度の高い種」がバス・ブルーギル等なのだ。
その「優先度の高い種」に選ばれた基準をもう一度確認してみよう。基準は5つ。
①生態系に係る潜在的な影響・被害が特に甚大
②生物多様性保全上重要な地域に侵入・定着し被害をもたらす可能性が高い
③絶滅危惧種等の生息・生育に甚大な被害を及ぼす可能性が高い
④人の生命・身体や農林水産業等社会経済に対し甚大な被害を及ぼす
⑤防除手法が開発されている、又は開発される見込みがある等、一定程度の知見があり、対策の目標を立て得る。

このうちオオクチバスは①~⑤の全て、コクチバスは①②③⑤に該当し、緊急対策外来種と認定された。①②③は納得するしかない。バスの食害はある。生態系に影響がない訳がない。このブログでも、ある条件が揃えばそこにいる在来種を根こそぎ食い尽くすことも確認されている。それは例えば閉鎖性の強い小規模湖沼で、湖岸に水草や葦などの小魚の隠れ場所のない水域だ。そこではバス侵入から数年でまさにバスしかいなくなる事が確認されている。
一方で在来種の減少はバスの食害が原因の全てではない事も事実だ。例えば「18.霞が浦北浦における過去20年間の水産有用資源減少要因 に関する考察」で紹介したように、霞ヶ浦の在来種激減はバスの食害などではなく、利根川水門の完成による霞ヶ浦の淡水化、およびそれに伴う水流の停滞に原因がある事が、科学的考察から明らかとなっている。

④はちと引っかかる。バスの場合は「農林水産業等社会経済に甚大な被害を及ぼす」部分が該当すると言うのだろうが、上述の通り霞ヶ浦の水産資源激減はバスの食害によるものではなく、琵琶湖についても同様の研究結果が紹介されている。また何より、日本人の食文化の変化により、例えそれら在来種が減らなかったとしても淡水域の水産業は衰退する運命にあった。あなたは最近、フナやコイ、モッゴを食べました?スーパーで見かけた?水産業は獲れないから衰退したのではない。売れないから衰退したのだ。琵琶湖・霞ヶ浦の漁業従事者の年齢を見れば、それは明らかだ。
(この辺は「琵琶湖の外来魚、捕獲量激減」で考察したので、参照されたし)

⑤はまさに政治的判断だ。どこに防除手法が開発されている? 何の対策の目標を立て得る?
環境庁の示した緊急対策外来生物は33種。そのすべてが⑤に該当するとなっている。いや⑤に該当する種が緊急対策外来生物に指定されたのだ。その中にはクマネズミやカミツキガメ、アメリカザリガニ、セアカゴケグモなどが含まれている。
どうやって? どうやってブラックバスやクマネズミ、アメリカザリガニを根絶すると言うのだろうか。防除技術が開発されていると言いきらなければ、根絶を目標とする緊急対策は打てないし、具体的に予算を取って活動を開始することもできない。ここは「開発されている」と言わざるを得ないのだ

ここが私が最も納得できない点だ。根絶できるはずのないものを「できる」と言いはって活動を開始するのだ。その歪は思いがけない形で跳ね返ってくるように思えてならない。本気で根絶しようと思ったら何をする? 網や釣りによる捕獲で根絶できると本気で考えているとは思えない。苦し紛れに考え付くのは遺伝子操作か毒物か。
例えばバスの繁殖を妨げるような遺伝子操作をした雄バスを放流するとしよう。思惑通りに事が運べばいいが、とんでもない生物が生まれたり、他の種に影響が出るなんて事もありうる。
例えば仔バスにだけ効果の出る毒物を流したとしよう。それが他の種、最悪の場合には人間に害が及ぶ事は絶対にない、なんて誰も言えない。まして遺伝的な悪影響で数代後まで害が及ぶことだってあり得る。


人間はいったいどれだけの生物を絶滅に追いやってきたのだろう。日本でだけ考えてみても、ニホンオオオカミ、ニホンカワウソ、コウノトリ・・・。生物を根絶するのなんてたやすいことだ。
おいおい、違うだろう。それらは根絶しようと思ってやった事じゃない。図らずも絶滅させてしまったのだ。では逆に意図して根絶した害獣・害虫はなに?
ウリミバエ、ミカンミバエは放射線を用いた不妊虫放飼法により根絶した。大量の不妊ミバエを放つことで自然界にいたミバエの繁殖の機会を奪ったのだ。沖縄で展開されたこの放飼法で放たれたミバエの数は実に625億匹! 沖縄だけでだよ。途方もない数が必要なのだ。

動物ではどうか。一部地域のカナダガン、タイワンザルの駆除が挙げられる程度。全国的に繁殖が確認された害獣・害魚が駆逐された例はほぼない。
それをやろうとしているのが今の生物多様性国家戦略なのだ。現実性と経済性を熟慮した科学的アプローチなどとは無縁の政治的判断と言わざるを得ない。

私が何より気にくわないのはこの部分だ。生物多様性の志は良しとして、ではそれは現実性があるのか。政治的プロパガンダで終わってしまうのなら、何もしない方がよっぽどまし。人間にとっても社会にとっても生物にとってさえもだ。

ではどうするべきなのか?
私自身の考えを次回で述べていく。

外来生物 2020問題を考える-2:生物多様性国家戦略

前回「外来生物 2020問題を考える -1: 愛知目標と外来生物法」においては、ブラックバスをはじめとする外来生物の2020年問題は、生物多様性条約に加盟する国により開催された国際会議:COP10で策定された「愛知目標」を起源とすること、日本においてはその達成に向けて2012年に策定された生物多様性国家戦略においてうたわれた国際的な約束事であることを示した。

そしてその生物多様性国家戦略では、20ある具体的な個別目標の一つ(目標9)として
2020年までに、侵略的外来種及びその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御又は根絶される。」
ことが掲げられているのだ。

では「優先度の高い種」とは何か?
環境庁は「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」の形でそれを示している。

環境庁の示した緊急対策外来種、重点対策外来種における対策の優先度の考え方(被害の深刻度に関する基準)は、以下の通り。
①生態系に係る潜在的な影響・被害が特に甚大
②生物多様性保全上重要な地域に侵入・定着し被害をもたらす可能性が高い
③絶滅危惧種等の生息・生育に甚大な被害を及ぼす可能性が高い
④人の生命・身体や農林水産業等社会経済に対し甚大な被害を及ぼす
(対策の実効性、実行可能性)
⑤防除手法が開発されている、又は開発される見込みがある等、一定程度の知見があり、対策の目標を立て得る。

このような基準により、該当する項目が多いとして選択されたのは
 植物 200種 うち国外由来 190種
 動物 229種 うち国外由来 209種 

環境庁HPより「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」を転載する。
(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list/gaiyou.pdf)

総合対策外来種

ここに示された国外由来外来動物のうちの55種が魚類
これがさらに細分化されていて、以下、魚類に絞って記載すれば、
既に国内に定着したと認められる「総合的に対策が必要な外来種(総合対策外来種)」は31種 で、その内訳は
 緊急対策外来種 4種
 重点対策外来種   2種
 その他の総合対策外来種 25種

これが個別目標9で述べられている「優先度の高い種」に他ならない。
では緊急対策外来種に認定された4種とは何か? ズバリ、
 チャネルキャットフィッシュ
 ブルーギル
 コクチバス
 オオクチバス

の4種である。

ちなみに魚類以外の緊急対策外来種には、タイワンザル、アライグマ、タイワンリス、カミツキガメ、セアカゴケグモ、カナダガン等の33種がリストアップされている。ノネコやアメリカザリガニ、クマネズミの名も見える。

また外来生物としては、既に定着してしまった総合対策外来種の他に、未定着と認定されている「定着を予防する外来種(定着予防外来種)」として魚類では16種あり、ガーやノーザンパイク、ナイルパーチ、ストライプドバスなどがリストアップされている。

具体的外来種が知りたい方は以下の環境庁自然環境局HPを参照。

すなわちオオクチバス等の4種は最優先で制御又は根絶されるべき種なのだ。
普通に考えればこれら緊急対策外来種全てを2020年までに根絶することは不可能だ。絶対に、と言ってもいい程に不可能だ。ならば行政はどうするのか? 国際的な約束事である生物多様性条約、それも日本が議長国を務め策定した愛知目標を反故にできるのか?

やはり何かしらの目に見える形での成果、根絶への道筋を付けることが最低限でも求められる事になろう。すなわちそれは、国または自治体としての法整備条例制定だ。これは避けられないであろう。滋賀県や宮城県条例のような形が国全体で採択される可能性が高いと考える。


ここまでが愛知目標とその具体策としての生物多様性国家戦略の成行だ。できるだけ私情を挟まずに論じてきたつもりだ。そして予言しよう。

滋賀県条例と同等の条例が全自治体で制定される。
バスのリリースは禁止される。


その時、あなたはどうするか? 私はどうするのか?
次回以降で自分に問うてみたい。

外来生物 2020問題を考える -1: 愛知目標と外来生物法

外来生物に関する2020年問題、バス業界では危機感を持て語られる2020年について改めて考えてみたい。
そもそも2020年問題とは何か? それはどこから提起された問題なのか?
実は立派な国際問題なのだ。
ことの起こりはCOP10。

COP10 とは2010年に名古屋市で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」。
COPとは Conference of Parties。直訳すれば「加盟国会議」のこと。なんでこの国際会議だけがCOPと呼ぶようになったのかは分からないが、文字面からは「生物多様性」は読み取れない。
COP10にはその根幹をなす生物多様性条約(CBD)に加盟する180か国が参加し、13000人が参加した。議長は当時の環境大臣、松本龍。菅政権の下、環境大臣を務めた後に復興対策担当大臣に就任し、数々の高圧的発言が問題となり辞任に追い込まれた、あの松本龍だ。
松本に関するモロモロは置いておこう。ただ、先進国と発展途上国の思惑が交錯し、直前まで合意案の策定は困難と思われていたCOP10で、まかりなりにも新戦略計画が策定・調印できたのは、松本の高圧的で強引な性格が吉と出たのかもしれない。

その新戦略計画が「愛知目標」だ。
「愛知目標」すなわち「戦略計画2011-2020」は、2050年までに「自然と共生する」世界を実現するビジョン(中長期目標)をもって、2020年までにミッション(短期目標)及び20の個別目標の達成を目指すものだ。そして2020年までに生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急の行動を実施するという20の個別目標を策定した。
これを受けた形で政府は愛知目標の達成に向けて、2012年に生物多様性国家戦略の改定を行い、目標の達成に向けたロードマップを示した。

つまり2020年の外来生物に関わる問題解決は、国際条約に基づく約束事なのだ。
「ルアーが売れなくなるからいやだ。」とか「トーナメントが開けなくなるのは困る」とか「バスがかわいそう」とかのレベルの話ではない。まずそこを肝に銘じよう。

しかるに愛知目標は「バスのリリースを禁止しましょう」なんて言うみみっちいレベルの取り決めをしたのではない(アタリマエだ)。上述した20の個別目標では、地球上のありとあらゆる生物(植物も虫も魚も獣も)についての生物多様性を確保することを念頭に、個別に目標を定めている。

興味あります? 一応、掲載しますね。

2020個別目標
環境省 生物多様性HPより)

この中でブラックバスに大いに関わるのは、目標9と目標11だろう。環境庁HPから同目標に関する具体策を引用する。

目標9
「2020年までに、侵略的外来種及びその定着経路が特定され優先順位付けられ優先度の高い種制御又は根絶される。また、侵略的外来種の導入又は定着を防止するために、定着経路を管理するための対策が講じられる。」

侵略的外来種は生物多様性にとっての主要な脅威の一つです。全大陸のあらゆる生態系において、外来種の数が増加し、拡大の速度も増しており、侵略的外来種によって世界経済への被害は1兆4,000億ドル以上になる可能性があるといわれています。外来種の脅威に対しては、(1)侵入の防止、(2)侵入の初期段階での発見と対応、(3)定着した外来種の駆除・管理の各段階に応じた対策を進める必要があります。
 
目標11
「2020年までに、少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%、特に、生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観や海洋景観に統合される。」

現在、世界の約13%の陸域と約5%の沿岸域が保護地域等によって保護されています。陸域の保護地域はわずかに増加している一方で、十分に管理されているのは2割ほどだと指摘されており、管理の有効性にはばらつきがあり、管理能力の向上が必要です。また、それぞれの生物の生態特性に応じて、生育・生息空間のつながりや、適切に配置された生態学的ネットワークを形成していくことが重要です。
なお、我が国の自然環境保全を直接の目的とした保護地域制度には、自然環境保全地域、自然公園、生息地等保護区、鳥獣保護区、国有林における保護林が挙げられ、自然公園については、国立公園・国定公園・都道府県立自然公園を合わせた面積は543万㌶と国土の約14.3%を占めています。


では「優先度の高い種」とは何か?

議論は核心に迫ってくるが、長くなったのでいったん終了。
次回のココロだぁ! by 小沢昭一 (もう知っている人も少ないんだろうなぁ。。)

41.北浦で何が起こっているんだ?

ずっと追跡している北浦上流部のアルカリ水問題。またも安塚観測所で奇怪なデータが観測されてしまった。
もう何がなんだか・・・

水質20190510

これは5月10日の安塚観測所の水質データだ。
(国土交通省 川の防災情報:
http://www.river.go.jp/kawabou/ipSuisituPast.do?init=init&obsrvId=2127000600008&gamenId=01-1105&fldCtlParty=no )

GW前半、関東は雨が続いた。後半は一転して晴天が続き、5月10日は全国で夏日となる最高気温が記録された日だ。
その日まで安塚のpHは上がる一方だった。5月9日には最高pH11.8、10日の8時にはなんとpH11.9に達している。なんという強アルカリ性だ。バス、溶けちゃうよ。
それがなぜか10日の9時から17時まで安塚観測所は閉局されていて、自動測定されるはずのデータはなし。そして18時に突然pH9.7が測定された。同時に8時に9.7であったDO(溶存酸素濃度)は、18時に11.7と測定されている。5月11日以降のデータも、10日に再開された測定データを引き継ぐようなpH10弱、DO10前後のデータが続く。

なに? 何が起きたの??

気象データを見てみよう。
気象20190510

気象庁の過去データから引用した5月10日の気象データでは、6時から17時までフルに日照時間があり、気温は10~16時まで24℃、13時に最高気温25.7℃を記録してる。降水量はもちろん0mm、風速は最大3.8m/s、基本的には南東の風だ。
晴天、南東の弱風、雨はなし。それならば北浦最上流部、安塚では植物プランクトンの活動が活性化し、しかも風により安塚方向にプランクトンが吹き寄せられるのが普通だ。するとどうなるか。pHは上昇し、DOも上昇していく。そう考えるのが普通だ。

しかし安塚の測定データは真逆。pHは下降し、DOは上昇した。なぜ? 何が起きた??

もう少し気象状況を深堀しよう。下図は5月の鉾田の1日ごとの気象データだ。
鉾田では5月1日にまとまった雨が降った後、2日から6日まで晴天、7日に弱い雨が降り、8日からは再び晴天が続いた。気温は雨の降った7日を除いて最高気温20℃を超えており、10日に26.1℃となった。風は平均で2m/s前後、最大風速でも4~5m/sと特に強風があった訳でも、無風が続いた訳でもない。

気象201905

39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る」では、水質がアルカリ化する要因として、
 (1) 石灰等の化学肥料が流域で使用された。
 (2) 打ち立てのコンクリート等から溶液が漏れた。
 (3) 植物プランクトンの活性が高い。
の3項を挙げた、
そして私なりの結論として(3)をチョイスした。しかし5月10日のデータはどうか。気温がこの春最高となった日に植物プランクトンの活動に伴うpH上昇が、逆に降下に転じることはあり得ない。むしろpHはより上昇するはずだ。

一方、(1)(2)の仮説が起きたのであれば、pHが上昇すると共にDOは減少する。例えば恒常的に(1)(2)にような汚染水が流入していると仮定すると、そこに清浄な水が流入したと仮定すれば、pHは下降すると同時にDOは上昇するはずだ。

なんだって、「39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る」は根本から検討し直さなければならないのか?

あ”~、分からん。辻褄が合わなすぎる。それに(1)(2)では、それ以前のpHとDOの変化が説明できなくなる。何より、晴天が続いた5月2日以降の水質変化、特に10日のデータ中断前後の水質と気象の関係からは、そこで突然、データが飛躍する事が説明できない。


私が苦し紛れに考え付いた答えは、
安塚観測所が閉局になっていた時、測定器を校正しpHとDOセンサを調整し直した。」

何とも安易な答えだが、そうとしか考えられない。閉局前のpH11.9という値はあまりにも極端すぎる。ひょっとしてpHセンサが異常だったんじゃないのか?それを観測所の担当者が気付いて校正し直した。その結果、作業時間中の測定データが表示されず、作業後のデータは作業前のものと飛躍した値になった。
(これは確定じゃないから。私の推定だから。念のため。)


このような事は実験や観測ではたびたび起こる事ではある。技術者や科学者はこういったノイズデータに惑わされないで分析を進める事も重要なのだ。
バス釣りだって同じだよ。なぜかたまたま釣れてしまった1匹のパターンを信じてやり続け、以後の一日を無駄に過ごした経験、あなたにもあるでしょ。ましてやどこの誰だか知らないバサーの昨日の釣果を頼りにする釣りなんて、つまらないよ。やめやめ。

40.魚のアルカリ耐性について

(汚染汚濁物質の魚類に及ぼす影響;小田,宇野,生活衛生11-4)

39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る」で、北浦上流部安塚周辺でpH10.5というとんでもないアルカリ性が測定されたことを紹介した。そんな所に魚はいない。そう結論付けた。
でも実際には魚はどの程度までアルカリ性に耐えられるのか?
今回はこれを調査する。

大阪市立衛生研究所の小田,宇野は、魚類の水質に対する強弱を実験により確かめた。
実験で想定したのは工場排水によるpHの変動。鉱山や製鉄、メッキ工場等からの排液は、硝酸、硫酸、リン酸等の混入により酸性化している可能性がある。また皮革、化学薬品工場、セメント工場等からの廃液は、苛性ソーダ、水酸化カルシウム等によりpH12~14の強アルカリ水が混入している可能性がある。
もちろん今日の日本では、水質汚濁防止法により工場等からの排水はpHは5.8~8.6に収まっていなければならない旨の規制があり、上記にような極端な例は(少なくとも公には)あり得ないはずだ。
鉾田市にはセメント工場や電材工場等があるが、それらが原因だとは思わない。

それには船越らの示した「セメントによる水質変化と魚に及ぼす影響の基礎的研究」(船越ら,砂防学会誌,Vol.55,No3,2002)が参考となる。
これによると水にセメントが混入した時の溶液のpH変化は図6の通り。比較的短時間でpH10を超え、pH11前後で飽和値に達する。


40-fig6 pH

そしてpH上昇と同時にDOは低下していく

40-fig7 DO

ここが北浦上流部で発生しているpH上昇の現象とは相いれない。即ち安塚観測所のpH上昇の原因はセメント混入とは考えにくい


小田らの実験の結果に戻ろう。小田らはpHを調整できる水層中での魚の行動および生存時間を調査した。
40-図3トゲウオ

図3ではトゲウオを用いてpHの違いによる魚の感応度を調査した。それによるとトゲウオは酸性側ではpH5.8以下で著しく嫌忌度が高まり、アルカリ性側ではpH7.0~11.0ではほとんど感応を示さないが、pH11.4以上になると著しく嫌忌度が高まった。

40-図4ニジマス

またニジマスによる実験ではpH4以下の酸性、pH10以上のアルカリ性水では生存時間が短縮してくることが分かった。
またラージマウスバスでの実験ではpH10.4~10.5流水中で7日間生存し、pH11に上昇した時、2~5時間で死亡した


魚種によりアルカリ性に対する耐性は異なるものの。pH10.5という高アルカリ下では魚は忌避行動を示すことが分かった。
このアルカリ化の原因については植物プランクトンの活性化と推察されるが、ここまでの調査では確証はない。おそらくアオコのように極表層面で植物プランクトンが活性化し、それに伴うpH上昇を上層を測定している安塚の自動観測機が捉えたものと思われる。
ならば極表面水のみの現象であり、下層部はより中性の水が占めている可能性もある。

アオコ発生時の下層水の水質が問題となるな。文献調査を進めなければ。
いや、これは現地に行って調査が必要だな。

39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る

前回「38.北浦上流部がアルカリ温泉水になっていた」で安塚観測所の水質データにおいてpH10.5という強いアルカリ性が示された事を紹介した。今回はこの問題を深堀していく。

北浦上流部 鉾田観測所の気象データによれば、4月16日から23日まで好天が続き、最高気温は19~25℃、降水量0mmだった。24日から27日までは小雨が続き日照時間はほぼ0、27日には最高11.9℃、最低3.3℃、降水量9.5mmの冬のような雨が降った。

そこで水質データはどう変わったか?
4月24日と27日のデータを比較してみよう。

4/24 15

4/27 15

 

安塚

神宮橋

安塚

神宮橋

水温(℃)

20.3

17.2

15.6

15.9

H

10.3

9.0

10.1

8.6

DOmg/L)

12.3

9.4

9.3

9.3

導電率(mS/m)

30.5

41.8

30.6

41.7



4日間の曇天少雨により安塚の水温は5℃下がり、DO25%低下した。pHと導電率はほぼ同値。一方、神宮橋では水温が1.3℃下がったものの、Ph,DO,導電率は微変レベル。

これは何を示唆するのか?

  

pHの高くなる要因を推察すると、いくつかの仮設が立てられる。

(1) 石灰等の化学肥料が流域で使用された。

(2) 打ち立てのコンクリート等から溶液が漏れた。

(3) 植物プランクトンの活性が高い。

 

蓮の一大産地である北浦周辺にとって、4月5月は蓮の植え込みをする大事な時期だ。土壌改善のため石灰なども使うだろう。ただでさえ大量に水を使う蓮畑に雨が降れば、畑の化学肥料が流れ出しても不思議はない。そうなればpHは上昇し、導電率も急増するはずだ。

しかし安塚の水質データは雨後においてもpHは上昇することなく、むしろ微減している。(1)はシロだろう。

 

同様に生乾きのコンクリートに触れたアルカリ溶液や、工場からの化学物質流出の可能性も低いと思われる。(2)もシロか。

では植物プランクトンの影響はどうか。

植物プランクトンや水草が日照により光合成を行うと、水中に酸素を排出するとともに、Hを上昇させる。日照がなく光合成がなくなればその逆だ。

 

水質と気象データを遡ってみよう。

前回紹介した安塚の水質データでは、pH415日の16時に最大値10.5を記録した後、漸減して16日の6時に最低値9.2まで下がった。DOも同様に15日の16時に最大値12.816日の6時に最低値8.9となった。

その時の気象は、414日夜から15日朝にかけてまとまった雨が降っていた。その後は晴天が続き最高気温も20℃以上となっていた。

 

符丁は合っている。1日のタイムディレイはあるが晴天時のpH増大から、雨天の後のpH低下の様子は414日から16日にかけての動きも、24日から27にかけての動きも同じだ。

雨が降るとpHが下がり、同時にDOも下がる。これは植物性プランクトンによる光合成の影響が強く出ていると考えざるを得ない。

植物プランクトンの最たるものがアオコ、正確にはミクロキスティス。北浦では6月から9月にかけて毎年アオコの発生に悩まされている。ただし安塚がいつもアオコ発生地点かと言うと、そうでもない。確かに下の7月時ではアオコは安塚に顕著にみられる。

アオコ_H307

霞ヶ浦河川事務所 アオコ対策作業状況より)

アオコ_H306

しかし6月にはむしろより下流部に発生している。それに4月にはアオコ発生は未だほとんど見られない。

H上昇原因はアオコとは言えない

 

ミクロキスティス以外の植物プランクトンももちろんいる。それらが安塚で極端に支配的であり、それがpH上昇とDO上昇を引き起こした可能性もあるが、現時点では明らかでない。この原因についてはもう少し調査が必要だ。

 

 

いずれにしてもそんなにアルカリ性の強い水域に魚はいるとも思えない

次回はその「魚のアルカリ性耐性」について調査してみたい。



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