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プロフィール

ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

34.琵琶湖における湖陸風を味方につける

(枝川,中島,京都大学;地理学評論 54-10 1981)

海岸沿いでは日射による陸地の温度上昇により、海風・山風が発生する。日中に陸の温度が上昇することで海から山に向かって風が吹き、夜間には逆に海水の温度の方が高くなることにより山から海に向かって風が吹く。
大きな湖でもこれが発生し、湖陸風と呼ばれる。琵琶湖や霞ヶ浦をメインに釣りをしている諸君にはお馴染みであろう。ではその湖陸風はどのようなタイミングでどの方向から吹くのだろうか。
京都大学の枝川らは琵琶湖周辺の風の季節変化について調査し、湖陸風の全容を明らかにした。

調査地点は琵琶湖周辺の気象庁地域気象観測所8か所。調査期間は1979年1月~12月の1年間だ。以下では象徴的な東岸の彦根と、西岸の今津を取り上げよう。
琵琶湖の風は春夏の季節風、周囲の山からの山谷風といった「一般風」が支配的だが、それらが弱い時には日中は湖風、夜間には陸風の吹くことが多い。その頻度は4~9月の温暖期には60日、10~3月の寒冷期には45日をカウントした。発生率にすると温暖期では33%、寒冷期では25%となる。釣りをする上では意識しなければならないレベルの高い発生率だと言える。

ではこの湖陸風はどのように吹くのか。
図4に各測定地点での温暖期の風向と風速を、図6に寒冷期を示した。

図4

     図4 温暖期の湖陸風

図6

     図6 寒冷期の湖陸風

少し分かりづらいので図4-1で説明しよう。

これはホドグラフと言う風向、風速を表すベクトルグラフであり、図4-1には温暖期の彦根のホドグラフを抜き出した。グラフ上の折れ線は1日の時刻ごとの風向、風速を表し、グラフの原点から各時刻を示す折れ線上の点を結んだベクトルが風を示す。x-y軸の1目盛りが1m/secを表すので、6時であれば南南東の風 0.7m/sec、9時であれば西の風 0.9m/secと読む事ができる。

図4-1
    図4-1 彦根におけるホドグラフ


すると図4、図6から次のような事が分かってくる。
1) 日中は湖から陸に向かって湖風が吹く。すなわち東岸では西風、西岸では東風が吹く。
2) 湖風は最大で2m/sec程度。温暖期の方が湖風は強くなる。
3) 湖風は12~15時に最大となり、24時間をかけて360°風向が変化していく。東岸では時計回りに、西岸では反時計回りに風向の変化が進む。

1)ではざっくり言ったが、正しくは「湖岸の法線方向」に吹く。東北~南西に湖岸線が延びる彦根ならば昼間の湖風は北西から、南北に湖岸線が延びる虎姫ならば昼間は西風が吹くことになる。
西岸の今津や北小松でも考え方は同様だ。一方、南湖の端に位置して直線状の広い湖岸を持たない大津では、顕著な湖陸風は見られないようだ。


さて、釣りのタクティクスに落とし込んでいこう。
バスの動き、ベイトの動きと風は大いに関係する。釣りのしやすさ、リグの選択にも大いに関与する。そして季節によっても風の影響度は異なってくる。季節風が強い時には湖陸風は考慮する必要はない。風の弱い日にこそ湖陸風を考えよう

例えば3月の無風時、まだ冷たい湖水に何か変化を与えるものが欲しい。水流でもいいだろうし、日射の変化でもいいかもしれない。そして何より、少し暖かくなってきた風が食いを誘う事が期待できる。
西岸の今津で12時に釣りをするのであれば、南東からの湖陸風が助けになる。ここは風による水温上昇が期待できる南東に開けたワンドやシャローだ。特に朝9時の無風状態から12時に1.5m/secの風が吹き始める時間帯。変化を見逃してはならない。
逆に朝6時には山側からの西北西の風が1.2m/secほど吹いているだろう。早朝の気温と水温の兼ね合いにより、風裏がいいのか風面がいいのかを考えよう。ちなみに琵琶湖の水温の年間変化については「3.琵琶湖における水温、水流の年間変化」で示した。参考にしてほしい。3月の琵琶湖の湖面水温は約5℃、4月初めで10℃だ。そして3月の彦根の最低気温は3.3℃、最高気温は11.0℃だ。早朝は風を避ける方が賢明だし、日中は風面が正解だろう。

琵琶湖で湖陸風が支配的となるような、一般風が弱い日は年間で約100日。琵琶湖以外でも、同様の湖陸風は霞ヶ浦や猪苗代湖などの大きな湖では発生しうる。天気予報とにらめっこして釣り当日はどんな風が吹くかを予想した上で現地に向かうのと、何の準備もなしに向かうのとでは雲泥の差だ。そして当日の現地の風の状況、気温水温を見てプランを微調整していく。

調査→仮説→実証→修正→・・・。PDCAサイクルかって?
色気がないなぁ。せめてプラグマティズムと呼んでほしいね。

特許検索方法

前回の「科学文献検索の方法」に続いて、今回は特許検索の方法についてご紹介したい。
まるで興味がない? そんなこと言わずに覗いてみてよ。面白いネタがあるんだから。

検索は簡単。特許庁の運営する「J-Plat」にアクセスする。
ここのトップページの検索欄に所望のキーワードを入力するだけだ。
例えばキーワードに「プロレス」なんて入力してみると、2019/02/06現在で45件がヒットする。キーワードが特許明細書中のどこかに使われていればヒット対象になるので、「かつぎ上げ落とし固め」だとか「逆さヒザ落とし」なんて言うプロレス技の特許に交じって、「原子力発電」とか「画像処理装置」なんてのがヒットする。なんだ?と思って明細書(特許の詳細を示した文書)を読むと、なんてことはない、プロセスをプロレスとミスタイプしている。こんなのもあるから注意ね。

一つのキーワードで大量の特許がヒットしてしまった時は、AND検索を行う。
「リール」なんて入れようものなら30000件がヒットする。そりゃそうだ。釣り用リールばかりじゃなく、工業用にも多くのリールが存在するのだから。なのでここは目標を絞り込んで、「リール 釣り バス」なんて打ち込むと、一気に16件に減る。逆に少なすぎだ。16件の中にダイワは3件、シマノはたった1件しかない。そんなはずはない。これはキーワードが不適なのだ。
そこで「リール シマノ」で検索をしてみると、ヒット数は2311件。そんなもんでしょ。私一人だって132件を出願しているんだから。大企業シマノの主力製品なら2000upは当然でしょ。

ちなみに上述したように、キーワードは技術項目でも人名でも企業名でもよい。


慣れてきたらいろいろ調べてみよう。例えば「スピナーベイト」。何件くらい特許が出ていると思います?
87件。少ないよね。もっとあるかと思っていた。中には藤木淳とか久保勝彦とかの聞き覚えのあるバスプロが発明者になっていたりする。 


ついでに特許制度について説明すると、特許法に定められる特許権の有効期限は、出願から20年。それ以降は使用は自由だ。
そして出願に掛かる費用は15000円、意外に安いでしょ。特許庁に収める費用としては、まずはこれだけ。ただしこれだけでは他者がその特許に抵触した時に特許使用料を請求することはできない。特許としてその内容が登録するに相応しいかを審査してもらわねばならない。何でもかんでも特許として認められるわけではないのだ。その審査請求に120,000円ほど掛かる。さらにその後もその権利を維持するために年に数万円の費用が必要になる。

ただし、これは特許出願作業を全て自分で行った場合だ。普通は特許事務所の弁理士に特許明細書の作成やら出願作業やらを代行してもらう。実はこれがバカ高い。内容によって様々だが、30~100万円だろう。なので私は自分で行っている(現役時代の業務出願はもちろん会社持ちだが)。

大切なことを忘れていた。特許は工業に関わる製品、技術にしか認められない。よって前述のプロレス技は特許として認定されることはない。同様に「ダウンショット釣法」や「ネコリグ釣法」もダメ。それらをやるための具体的釣り具だったら、特許化できる可能性がある。それが技術的に新しくて、誰もが容易に思いつくものでなければ。
ちなみに「釣り ダウンショット」でJ-Platを検索すると、4件がヒットする。そのうちの2件は実用新案(特許よりも権利範囲が狭く、登録されやすい)に登録された。そのうちの一つはモーリスの出願だ。その公報はこんなものだ。
20190208100503428.gif


特許調査や特許出願、やり始めると結構楽しいんだ、これが。
君もどう?

科学文献検索の方法

毎度偉そうに御託を並べている私だが、それらはみな研究者の書いた科学論文のおかげ。
ではその科学論文をどうやって知るのか? 今回はその方法を伝授しよう。

jstage.jpg

例えばGoogleで「ブラックバス 琵琶湖」なんて打っても、出てくるのは釣果自慢ばかり。私が紹介したような科学文献にはなかなかたどり着かない。ではどのように調べるのか。簡単である。科学文献サイトを調査すればよい。
私が主に使っているのは J-STAGE と言う、国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が主催する科学サイト。
 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

最初にアカウント登録をすることで、自由に所望の文献を入手できる。れっきとした国が運営するサイトなのでご安心を。

例えばここで、「ブラックバス 琵琶湖」と入力して検索すると、100件以上の論文がヒットする。各論文の大まかな内容は抄録を読めばいいし、より詳しく知りたければ、「PDFをダウンロード」すればよい。

ここからが科学文献を追っていく上でのコツになる。抄録やPDFの全文を読んで、もっと深く知りたい、周囲の事柄を知りたいとなったら、その下に紹介されている引用文献を探る。引用文献は直接リンクが貼られていて、すぐに跳べる場合もあるが、リンクされていなければ、自分で論文名や著者名から検索を掛ける。
もう一つは、同じ著者名で検索を掛けて、その人がその後どのような研究を行ったかを確認する。
ちなみに「ブラックバス」は科学上はいわばあだ名なので、文献検索では「オオクチバス」の方が通りがいい。ヒット数が多くなる。

このようにしてどんどん調査範囲を広げていくと、必ずどこかで面白い文献にぶち当たる。これがなかなか根気がいる作業なのだ。
あとは貴方が何に興味を持つかだ。バスの食べている物を知りたければ、「オオクチバス 食性 捕食」と打てばいいし、琵琶湖の水温分布や水流が知りたければ、「琵琶湖 水温 水流」と検索すればいい。Googleと全く同じだ。もちろんちょっとキーワードを変えて目的の文献にたどり着けるように工夫するのはググる時と同じだ。

もう一つ付け加えるなら、科学文献は必ずしも正しいとは限らないと言うこと。スタップ細胞がいい例だ。間違ったデータから間違った結論を導いている文献も少なくないし、なにより普遍性という意味では、限定的な条件下でしか成立しない事項が多く見受けられる。特に生物を相手にした文献では多いと思った方がよい。
だから論文がこうだ!と言っていても、いやいや俺の湖は違うんだって事は普通にあると思ってほしい。それも科学なのだ。

同様のサイトには、
 国立国会図書館オンライン…国会図書館収録の全図書
 Science・・・アメリカ最大の科学誌
 サイエンス日本語版はこちら・・・ただし検索は英語で

一度科学の世界に足を踏み入れてみるのも、新しい発見があって楽しいよ。 

33.ベジテーションの攻略法を科学する

前回の「32.真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」では、真夏の浮葉植物エリアは決しておいしいエリアではない事を紹介した。しかししかし、
「なに言ってんの。リリーパッドのフロッグは真夏の定番パターンでしょ。」
「びっしりと茂ったマツモをテキサスで撃ち抜く。過去に何回もバスを上げているよ。」
と言うお方も多かろう。

本当にそうだったのか?
これから述べるような Something else が加わってこその好ポイントだったのではなかったか?
自らの釣りをもう一度振り返って欲しい。

「32.真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」のまとめを振り返ると、
浮葉性植物の下は一日中、低溶存酸素。特に早朝の中層部以下では酸欠状態となる。
沈水性植物であっても、明け方は溶存酸素量が低い。日照時間と共に酸素量が増してくる。
特に8月のベジテーションエリアはどこも酸欠状態だ。溶存酸素状態に弱いバスはベイトフィッシュを追わなくなる。

つまり浮遊植物の下にバスはいない。あるいはいても食餌行動を取らない。朝一のゴールデンタイムを水草エリアで過ごす事に意味はない、と言う事になる。

しかし一方で、
・夏の高水温時には浮葉性植物の下は日射を避けられ、かつ低水温となる。
・ベイトフィッシュは低溶存酸素状態に強く、水草エリアを“Refugia”(隠れ家)として潜んでいる

そう、ベジテーションの下にベイトはいるのだ。だから何かの要因によりここの低溶存酸素状態が解消されれば、バスはこのアリアに入り込みベイトを捕獲しようとする

その要因とは何か?

もう一度、「32.真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」のデータを確認しよう。

32_図3
32_図4
(ラムサール条約湿地・片野鴨池の溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係,田尻ほか,伊豆沼内沼研究報告8号,pp23-34(2014)より)

図3の6月のデータでは表層部の溶存酸素量の時間変化が明瞭に現れており、かつ表層部に比べて中層部の低酸素状態がはっきりと見て取れる。対して図4の8月のデータでは表層部における溶存酸素量の時間変化が朝~夕へと高くなる様子がはっきり現れていない。更に定点1の中層部における不可解な溶存酸素量の変化。

これらについてはまず、このデータがたった1日のデータであることを認識しなければならない。その時の気象条件や水流の影響をたまたま受けた結果である可能性が大いにある。そしてそれこそが、ベジテーションエリア攻略の糸口になり得るのだ。


それは
 ①酸素を含んだ新鮮な水の流れが当たった時。
 ②強い風により表層水に空気=酸素が供給された時。
 ③強い雨により酸素を含んだ雨滴が降り注いだ時。
であろう。

①水流
元来、ヒシやアサザ等の浮葉植性物は流れの緩い所に生育する。これに自らの茎・葉による抵抗が加わり、浮葉性植物の密集エリアは水流が妨げられている。しかし降雨や川の増水、水門の開放等により周囲に水流が発生すれば、その影響により浮葉性植物エリアに新鮮な水が供給される場合がある。その時が狙いだ。
特に外縁部が狙い処となる。新鮮な水流が当たる面に水に導かれるように侵入したバスが、そこに潜んでいたベイトフィッシュを追うという場面が想像できるだろう。

また浮葉性植物エリアに小さなインレットがある、湧水があるといったポイントがあれば、まさに絶好のねらい目だ。時間を問わず狙ってみたい。

②風
図3、4の定点1に着目してもらいたい。特に8月のデータでは10~12時の中層部における溶存酸素量が急激に増大し、同時刻の表層部と同レベルにまで高まったもの、14時以降は低下した。
これはなんだ?

定点1は沈水性のマツモの生い茂るエリアだった。浮葉性植物エリアではないため、水面は外気に触れる。すなわち風が当たる。この時に強風が吹いて表層部の酸素を含む水と中層部以下の水が対流を起こせば、表層~中層の溶存酸素量は一時的に均一になり、中層部の酸素量は高まる。他の浮葉性植物の生えるエリアでは風が葉に邪魔されて対流を作らなかったのではないかと推察される。

「ちょっと待ってくれ。定点4は水草の生えないオープンエリアだったはずだ。6月になぜそこの酸素量が日照と同期して増えていくんだ?それに風の当たるオープンエリアの8月のデータになぜ同じ傾向が現れない?」

ごもっともなご意見です。しかし水草がなくても日照と共に酸素は増える。なぜか。
植物プランクトンがいるから。植物プランクトンもまた光合成により酸素を作り出すからに他ならない。だから6月のデータでは全測定地点において日照と同期した酸素量が現れた。8月においても多くの測定点で14時まで酸素量が増え、以後は漸減している。これはおそらく14時以後は日が陰ったと推察される。

ではなぜ8月の定点4のデータに定点1と同じ傾向が現れないか?
正直、よく分からない。あるいは定点1における現象も風によるものではなく、定点1エリアに限定した何かが起きていたのかもしれない。例えば明渠水路直近に位置する定点1に水路から流入があった。これは大いにありだし、①で述べた通り、そのようなポイントを見つけ出すべきだ。
例えば測定のためのボートの動きが水流を作ってしまった。こうなっちゃうともう真実はいずこの世界。考えてはいけないし、データを鵜呑みにしてはいけない好例となる。

風については浮葉性植物の種類によっても条件は変わってくるだろう。イボウキクサやアオウキクサ、ホテイアオイといったいわゆる浮草は、水流や風により吹き寄せられて群落を形成する。それらの群集エリアは風下であったり、流れの吹き溜まりであったりする。と言う事は浮草エリアの外縁部には新鮮な風もしくは水流が当たっている事になる。ここでもエッジがキモとなろう。
ヒシやアサザ、ハスなどは水底に根を下ろして水面に葉を広げているので、風に煽られることはないが、ここでも風面には溶存酸素の多い水が当たる事となるので、方向を定めて狙いたい。


③雨
理屈的には影響はあるのかも知れない。雨滴は数1000m上空からタップリ空気に触れながら地表に落下してくるのだから、溶存酸素量は十分だろう。しかし考えてみれば降雨量なんて相当な雨でも数10mm。水深1mのエリアなら全水量の1~2%が上乗せされるだけ。これで溶存酸素量が決定的に上昇するだろうか。
これが浮遊性植物のないオープンなエリアなら、雨滴による攪拌効果で酸素量が増えることも考えられるが、オニビシ等が水面をカバーした状態ではそれも期待できない。

スマルア技研の記事でも雨は釣果に影響しないというレポートがあった。それも考え合わせれば、あまり雨の影響はないかも。


どっちにしても、浮葉性植物エリアの真ん中、しかも水底を攻める積極的な理由は見当たらない。浮遊性植物が押し寄せている岸際も同様だ。そこに酸素なんてないよ。
狙うとすればそこにプラスされるSomethingがある場合だけだ。






32.真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!

ラムサール条約湿地・片野鴨池の溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係
       ※1 田尻ほか,伊豆沼内沼研究報告8号,pp23-34(2014)

真夏のバス釣りは太陽との闘い。バスもバサーもお日様から逃れようと必死だ。そんな時、頼りになるのがべジテーション。でもマツモだろうがオニビシだろうが同じという訳ではなさそうだ。本文献をじっくり読んでみよう。

田尻らは、 ラムサール条約登録湿地である石川県加賀市の片野鴨池において,野外調査および採集した植物を用いた実験によって溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係についての調査を行なった。実験を行った片野鴨池は多くの水鳥が飛来する自然の湿地で、周囲3km、面積10haほどの池である。隣接する下福田貯水池と水路で繋がっているが、下福田貯水池にはバスが多いが、池全面を水草で覆われた片野鴨池にはバスが少ないと言う特徴がある。
これを田尻らは、低溶存酸素状態に弱いバスの生態と関係があるものと推定して、水草と溶存酸素量の関係について調査した。

片野鴨池の地形と水草の生育地を図1に示す。東方の下福田貯水池から水路を経て流入があり、池のほぼ全面をオニビシ、クロモ、マツモ、ホソバミズヒキモ、ヨシ、マコモが覆っている。国内有数のガンカモ類の越冬地となっており、計10000羽近くのマガンやトモエガモが飛来し、1996年にラムサール条約湿地に指定されている。
生息している魚類にはモツゴ、タモロコ、ウキゴリ、コイ、フナの他、外来種であるカムルチー、ブルーギル、オオクチバスが確認されている。当然、バスは禁漁である。

32_図1
図1(※1より)

溶存酸素の測定は6月12日8月9日の2回、図1に示した定点1~6の地点で24時間にわたって記録した。定点1~6の水草の植生の概要を図2及び表1に示す。

32_図2
図2(※1より)

32_表1
表1(※1より)
いい感じだよね。朝一番に乗り込んで、図2の5)や6)のオニビシやハスの切れ目にテキサスを落としこもうか。1)のマツモをすり抜けてジグヘッドのグラブを泳がそうか。そんな事を考えるよね。しかし調査結果は意外なものだった。

図3に6月12日、図4に8月9日の溶存酸素量測定結果を示す。表層とは水深5cm、中層は水深1mを示す。表層の溶存酸素量は太陽による光合成に伴い日の出時刻から増えて行き、日没時に最高となった後、夜間は減り続けて日の出時には最低となる。
そして水深1mでは溶存酸素量は終始5mg/L以下。夜間の定点5に至ってはほぼ0だ。これが真夏の8月9日にはより極端になる。マツモの生い茂る定点1を除いては、どの地点も中層ではほぼ0だ。

32_図3
図3(※1より)

32_図4
図4(※1より)

そこで筆者は片野鴨池から水草を採集し、日照と溶存酸素量の関係を実験により確かめた。実験に用いた水草はオニビシ、マツモ、ホソバミズヒキモ。これらを分類して水槽に入れ、日照時間と溶存酸素量の関係を求めた。
結果を図5に示す。測定結果ではマツモ、ホソバミズヒキモを配した水槽の溶存酸素量は日照時間中に増加し、夜間に漸減するのに対し、オニビシの水槽の溶存酸素量は日照時間中にわずかに増加したものの、全体としては減少し続けるのだ。

32_図5
図5(※1より)

びっくりしたでしょ。オニビシって水中の酸素量を減らすんですよ。筆者はこれをオニビシの葉が水上に存在することから、日中に光合成により発生した酸素は空中に排出され、夜間に呼吸により吸収する酸素は水中から得ているためと説明している。

そう、植物は呼吸するんです。中学の理科で習いましたよね。植物は光合成により日中は二酸化炭素を取り込んで酸素を生成し、夜間は酸素を吸収する。総量として酸素を増やしているが、出しっぱなしって訳ではない。知っていますよね?
なので全体が水の中にあるマツモやホソバミズヒキモの周辺では日中に酸素量は増えるのに対して、オニビシの下では酸素量はむしろ減っていくのだ。これはオニビシに限った現象ではなく、水上に大きく葉を広げるハスやホテイアオイでも同様であろう。

そしてこれに追い打ちをかける様に「バスは低溶存酸素状態に弱い」という研究結果が見つかった。詳細は別章で述べようと思うが、オオクチバスはベイトフィッシュであるモツゴやヌマチチブに比べて低溶存酸素耐性が低く、低溶存酸素環境下ではベイトを追わなくなると言うのだ。つまり浮遊性の水草の下にベイトは居られても、バスは居られないことになる。

さあ大変! 今までのベジテーション攻略法は間違いだったのだ。もう一度整理する。
1)マコモ、マツモなどの沈水性の水草は昼間に酸素を放出し、夜間に酸素を吸収する。このため明け方には溶存酸素濃度は最低となり、時間を追うごとに酸素濃度は高まる。
2)オニビシ等の浮葉性の水草の下は低溶存酸素となる。特に早朝の中層以下では酸欠状態に等しい。
3)水面直下に比べ水深1mの中層の溶存酸素は1/5~1/10しかない。
4)8月の溶存酸素は6月の1/2に低下する。

これを釣りのタクティクスに落とし込んでみよう。
1)オニビシ等の浮遊性植物は敢えて狙わない。ベイトは居てもやる気のあるバスは少ない。それでもべジテーションを割ってバイトするバスを見たいのなら、夕方限定、トップ限定だ。
2)マコモ、マツモ等の沈水性植物の周辺は溶存酸素が多くベイトもバスもいる。でもねらうなら早朝ではなく夕方近くがいい。
3)水草を狙うならサーフェース。水底の溶存酸素は極端に低く、バスの活性も低くなる。水草の上側でノーシンカーのワームを漂わせよう。
4)真夏のベジテーションは敬遠する。太陽は避けられても溶存酸素は低い。

いやぁ知らなかったな。水草=酸素は豊富って思っていませんでした?
早朝のオニビシエリアでフロッグを投げていませんでした?
マコモの根本にダウンショットを落とし込んでいませんでした?
全部間違いなんだって。
溶存酸素量は水草だけではなく、風や水流等にも影響されるので、それらの条件もよく考慮して攻略エリアと攻略法を練るべし。

まだまだ知らない事が多いんだよ。勉強になるなぁ、ご同輩。
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