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プロフィール

ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

44.バスの遊泳能力はどれほどなのか?

Convenient Analysis of Swimming Mechanism of Largemouth Bass Using Digital Video Cameras
( Matsunaga(近畿大学)ら,Fisheries Engineering VoL 41 No, 3, pp.245-250, 2005 )

これまでも「※1 バスの遊泳能力はアユに及ばない」とか、「バスは長距離を早く泳げない」などと書いてきたが、本当にバスの遊泳能力は他の魚より劣っているのだろうか。本研究ではバスの遊泳能力をデジタルビデオカメラで観察することにより解き明かしている。

※1 例えば「9.琵琶湖野田沼周辺におけるオオクチバスとブルーギルの胃内容物と糞中DNAによる摂餌生態の推定

近畿大学のMatsunagaらは、オオクチバス通常状態での遊泳(Steady swimming)と、瞬間的遊泳(Burst swimming)のメカニズムをデジタルビデオカメラにより解明した。

実験ではオオクチバス9匹(体長 11.0~25.5cm)をサンプルとして実験水槽に人工的な流れを生じさせた状態で遊泳させ、デジタルビデオカメラにより撮影した。実験水槽での流速は 0.14~0.57 m/sec。この速度でサンプルのバスは一定時間泳ぎ続けており、泳ぐバスの尾びれの振動数と振幅を測定した。

遊泳速度と尾びれの周波数の関係をFig.3に示す。図における各マークはサンプルバス別に支援しており、例えば●は体長11.0㎝、□は25.5㎝のバスのデータを示す。
遊泳速度の単位はTL/sec、ここでTLとは体長を示す。例えば最右上の●点は体長11.0cmのバスであり、4.5 TL/secであるから速度は
 4.5*11.0=49.5 cm/sec
を示し、その時の尾びれの周波数は8.2 Hz となった。
同様に最左下の□点は25.5cmのバスであり、遊泳速度は1.0 TL/secであるうから速度は
 1.0*25.5=25.5 cm/sec
を示し、その時の尾びれの振動数は 2.5 Hzとなった。□マークの最大値を見ると、このバスが振動数 5 Hzで尾びれを振った時で、その速度は 2.2 TL/sec、即ち
 2.2*25.5=56.1 cm/sec
これは実験における最高流速に他ならない。

44-Fig3.jpg
Fig.3 (標記文献より)

この遊泳速度:vと尾びれの振動数:TBFの関係を線形近似すると、
 TBF=1.21*1.66V
となる。

流速を増していくと、バスは定常的な遊泳状態を維持できなくなり、早い泳ぎと定常遊泳を繰り返すようになる。この境界域は 1.88±0.24 TL/secであった。イメージできるだろうか。流れに乗り遅れまいと何回か尾びれを激しく振ってから、またゆったりとした泳ぎに戻る事を繰り返すのだ。この特性は多くの魚種で観察される。
1.88 TL/secは11.0cmのバスでは20.7cm/sec、25.5cmのバスでは47.9cm/secに相当する速度である。

このような状態はバスにとっては居心地がいいとは思えないので、バスはこの境界域以下の水流にいたいのではないか。すると30cmのバスなら30*1.88=56.4 cm/sec 以下の流速の水域を好むと考えられる。そして大きなバスほど早い水流に対応できることになる。


次に同実験における遊泳速度と尾びれの振幅の関係を求めた。Fig.4に示すグラフでは遊泳速度と尾びれの振幅に強い相関関係は表れていない。これは南洋マグロでも確認されており、これらの魚では遊泳速度は尾びれの振動数に強く相関している。

44-Fig4.jpg
Fig.4 (標記文献より)

次にバスの捕食時の瞬間的な遊泳速度を測定した。
試験水槽に餌を投入した際には、バスは急激な遊泳(Burst swimming)を示す。その時の遊泳速度の時間変化をFig.6に示す。サンプル魚は体長17.0cm。餌である金魚にアタックする時には最大5.8 TL/sec=98.6 cm/secの速度で瞬間的に泳ぎ、その際の加速度は11.0m/sec2であった。しかしその高速遊泳は瞬間的でありせいぜい0.5sec、餌を捕食した後は再び餌が投入させるまで定常状態に戻る。Fig.6中の↓は餌の投入時刻、↑はバスのアタック時刻を示す。餌は繰り返し投入されたが、バスは餌の投入に驚いて瞬間的に強く遊泳した後、2~5sec後にアタックしている。

44-Fig6.jpg
Fig.6 (標記文献より)

バスはパイク等と同じく、Ambush predatorと呼ばれる。直訳すれば「待ち伏せする捕食者」(なんかカッコ悪いな)。Ambush predatorは通常はストラクチャの陰に潜み、餌が近づいてきた時に瞬時に高速で泳ぎ餌を捕食する。しかし持久力はない。
ここでのサンプルは17.0cmという子バスだったが、定常遊泳の観察結果で表れているような遊泳速度とTLとの関係が、瞬間速度でも成り立つと仮定すれば、40cmのバスは瞬間的に
 5.8*40=232 cm/sec
の速度でアタックすることになる。0.5secの一瞬の動きであったとしても、116cmは移動することになる。

瞬間的な速度についてはピンとこない処もあるだろうが、ウサイン・ボルトの初速が4.01m/secと言ったらどうだろう。バスはボルトの1/5の小さな体でボルトの半分以上の瞬間速度を叩き出しているのだ。しかも水の中で。
では水泳の世界記録はと言うと、50m自由形で 20.91sec。この時の平均速度は239.1cm/sec。40cmのバスは2m近い大男達と同じ速度を出すのだ。でも彼らは飛び込んでいるから。静止した状態から壁キックもなしで加速しろと言ったら、とてもじゃないが瞬時に239.1cm/secなんか出る訳がない。
バスの瞬発力はもの凄いのだ。


では、これらの情報を釣りのタクティクスに落とし込んでいこう。

我々がバスのアタックを目撃するのは、主に見えバスがルアーに気づいて近づいてバイトする場面だろう。その時のバスはゆっくり近づいてパクっと食いつく感じだ。思うにあれは本気の捕食のためのバイトではない。いわゆる「口を使う」状態。人間であれば「なんだこれは」と手を伸ばした状態なのではないだろうか。
Ambush predatorの本領は、バスに気づかずに近づいてきたベイトを一瞬でアタックする時だろう。その時のバスは上記のように2m/secの高速で瞬間的に遊泳し、大きな口を開けてベイトを吸い込む。その移動距離は1m近くなる。
この移動距離については別途検討したいが、ルアーとしてはそこまで想定した動きをすることだろう。つまりバスが潜んでいると思われるポイントの1m以内のレンジでは、いつバスがアタックしても不思議はない。そのつもりで操作する。逆に多くのプロがやっているような、ポイントにダイレクトにルアーを落としていく方法はいかがな物だろう?fig.6でも生き餌投入の瞬間、バスは驚いて瞬間遊泳を行っている。もちろん試験水槽内と実際のフィールドでは異なるだろうが、無用な刺激を与えないに越したことはない。少し離れたところに着水させてから、ポイントに近づけるというアプローチが可能であるならば、そうした方法を取る方がよいと考える。

もう1点。クランクベイトやスピナーベイトを操る時のイメージについて。あなたはどのようなイメージをしているのか?泳いでいるベイト(すなわちルアー)にバスが後ろからついて泳いできて、どこかでたまらなくなって後ろからガブリとやる。そんな感じでしょうか。
前述のようにバスはAmbush predator。通常はそんな捕食の仕方はしない。自分の潜んでいるストラクチャーの近くに来たベイトに瞬時に襲い掛かるのだ。

ちなみに多くのリールの巻き上げ速度は70cm/1回転。ルアーの移動速度は意識しながら操作していると思うが、Fig.3で表された定常遊泳速度は最大でも50cm/sec程度。皆さんの操作しているルアーは、バスにとってはかなり早いのかもしれない。バスプロもよくやっているよね。最初にサーチすると称してスピナベ等を早いリーリングで泳がせている。リールの回転速度は毎秒2回転くらい。あれでバスが掛かった処をまず見ない。掛かったとしてもただのラッキーだろう。そんな速度で後ろから長距離を追跡してアタックできるバスはいない。アタックしてきたのは、その近くにたまたま潜んでいたバスが、下からバイトしたのであろう。

このようなバスのベイトに対する捕食形態については「11.コクチバスによって捕食されるウグイの最大体長」で述べているので参照されたし。

バスの捕食形態から考えれば、引き物系のルアーは、バスの潜むストラクチャーに絡ませるのが必須条件となる。潜んでいるバスに近づいてしまったベイトのイメージ。ならばストラクチャまでのルアーの移動は迅速でいい。ストラクチャー近くでもバスのアタックスピードを考えれば、そんなにゆっくりリトリーブする必要もない。そこはその日のバスの反応次第だ。
そうではなくオープンな水域にクルーズしているバスを掛けたいのなら、バスの定常遊泳速度を意識したスローリトリーブが必要になる。かなり遅いよ。リール操作は毎秒1/2回転くらい。


どのような状態のバスをどう釣りたいのかによって、ルアーの操作法が違ってくる。当たり前の事がこのような研究から明らかになるのだ。

43.環境DNAによる水生生物調査

前回「42.湖の水コップ一杯でそこに棲む魚が分かる!」に引き続き、環境DNA分析と言う新技術に基づいた調査について取り上げる。今回は国内の河川湖沼における調査結果の例を紹介したい。

(1) 江の川における環境DNA分析を用いたアユの定量化と生物量に影響を与える環境要因の検討
(乾ら(山口大学),土木学会論文集B1 vIL73,No4, 2017)

山口県の江の川上流域の複数個所からサンプリングした水により環境DNA分析を行い、場所毎のアユの生息密度を求めた。これとオオカナダモ等の環境に影響を与えると思われる外来種との関係を求めた。また溶存態無機窒素、リン等の濃度や標高、流速、水深等も測定された。
観測箇所は全19か所。これを従来の方法で調査したと考えたら、とてつもない時間と労力が必要だっただろう。環境DNA分析開発の効果は絶大だ。

43-Fig1.jpg
右上が下流となる(標記乾らから引用)

調査結果によるとアユのDNA濃度は上流ほど、標高が高くなるほど大きくなる傾向が見られたが、流量や水深とは無関係。そして最も注目されたオオカナダモの被度(どのくらい水面が覆われているか)とも無関係であることが判明した。
ヒステリックに外来種撲滅を叫ぶ集団にとっては冷や水を浴びせられた格好になってしまった。


(2) 在来希少種カワバタモロコの環境DNAによる検出系の確立
(福岡(神戸大学)ら,日本生態学会誌 66 ,2016 )


福岡らは、レッドリスト登録されている在来希少種カワバタモロコについて、兵庫県内のため池における生息確認手法として環境DNA分析が応用可能であるかの検討を行った。
兵庫県内にはため池が40000以上あるが、その内カワバタモロコの生息が確認されている池はわずか30しかないと言う。それらの真偽確認が大きな目標となる。

福岡らは人工的に作ったサンプル池での確認実験を経て、カワバタモロコ生息確認方法として環境DNA分析の有効性を確認した後、フィールドワークとして下図の81地点を選んだ。
43-Fig2.jpg

その結果を下表に示す。カワバタモロコのDNAが検出されたのは、宝塚市で1か所、神戸市北区で2か所等の計6か所のみ。それら6か所について実際にわなを仕掛けカワバタモロコの捕獲を試みると6か所中の5か所からカワバタモロコが捕獲された。
残りの1か所については追調査が必要だが、環境DNA分析はカワバタモロコの生息調査に有効であると結論づけられた。

43-Table1.jpg

上記の乾らの調査と同様にここはもう一歩踏み込んで、影響が疑われるオオクチバスブルーギルの生息の有無を同時に環境DNAにより分析してほしかった。
サンプリングしたDNAは1週間ほどで紫外線等により分解されて再調査不能となるため、同時に狙いを定めた分析が必要となるのだ。


(3) 環境DNAを用いた山口県内2級河川におけるヌートリアの侵入状況と生息適地の把握
(赤松(山口大学)ら,応用生態工学21(1) ,2018 )

赤松らは山口県内20水系87地点を対象に採水し、環境DNA分析によるヌートリアの生息調査を行った。その結果を下図に示す。

43-Fig4.jpg

既に調査地域20水系のうち14水系にヌートリアは生息していたのだ。
このような調査は環境DNA分析ならでは可能となるものだろう。従来方法で「ここにはヌートリアは一匹もいない」ことを証明することの困難さは容易に想像できる。
またヌートリアのDNAが高濃度に検出された地点の写真を見ると、コンクリート護岸ではなく植生を持つ川岸であることが分かった。岸に穴を掘って巣を作るヌートリアの生態と合致する。

43-Fig3.jpg

このように環境DNA分析は急速にその応用範囲を広げていて、今後様々な分野で活用されるだろう。個人的には、
・在来種生息数とバス・ブルーギル生息数の相関調査
・国外外来種の未侵襲湖沼の確認と保護(特に北海道)
・琵琶湖等で行われている外来種撲滅作戦の効果の程

なんてのをやってほしいな。

42.湖の水コップ一杯でそこに棲む魚が分かる!

環境DNA分析の野外調査への展開

なんともすごい世の中になったもんだ。DNA分析のことである。
思い返せば、人のDNA配列を解明しようという壮大な計画:ヒトゲノム・プロジェクトがアメリカで開始されたのが1990年。元来15年で解析する計画だった30億ドルを掛けた大プロジェクトは、結局たった10年で全DNAの解析に成功する。30億塩基対の配列情報の解明には、国際的な研究協力と、急激な解析方法の進歩が必要だったが、研究者達はそれを成し遂げ、今や誰でもネット経由でその情報にアクセスすることができる。
京都大学化学研究所ゲノムネット
  https://www.genome.jp/ja/about_ja.html


そしてDNA研究はあらゆる生物の情報解析に向かう。ネズミもトリも魚も虫も。そこにはフナやウグイやバスも含まれている。その最先端の一つが「環境DNA分析」。例えば魚からは分泌する粘液や糞等の排泄物に、それらのDNAが含まれている。犯罪捜査ドラマでおなじみの、唾液の付いたコップから犯人のDNAが抽出できるという、アレである。
そしてそして、今やその精度は、湖のコップ一杯の水からそこにどんな魚が住んでいるかを推測できるレベルになったのだ! 採取した水に含まれるごく微量のDNAを濃縮し、分析に足る濃度に高めた上で塩基対配列情報を策定していく。

<研究最前線>魚を獲らずに生態調査!「環境DNA」が注目される理由
https://m-hub.jp/biology/1670/93-1


すごいでしょ。コップ一杯の湖の水からそこに住む魚種や大まかな生息数が推定できる。
上の記事に登場する龍谷大学 山中氏の標記研究を見ていこう。
環境DNA分析という手法が登場したのは2008年、まだ生まれてから10年の若い技術だが、その応用範囲は急激に世界レベルで広がりを見せている。欧米では主に外来種の同定に応用されており、フロリダ湿地帯でのビルマニシキヘビ検出や、イギリスでのウシガエル検出が行われた。逆に希少種の生息確認を目的として、日本国内でオオサンショウウオやカワバタンモロコの検出が行われた。分析は湖沼・河川が中心だが、海の沿岸部においても数々の調査研究が進められているのだ。

その手法はあっけないくらいにシンプルだし、分析装置も巨大で高価なものとは思えない。いや、本当は素人には分からない複雑で高い技術を要するものなのだろうが、下に表されている手法はまさにあっけない程だ。

分析手法
                (標記 山中らから引用)

DNA分析のための詳細な手法を著者は本論文で紹介しているが、ここでは説明は避ける。第一、私がちゃんと理解できていないし。いずれにせよ上図のどの方法でも用いる装置は小さくて、複雑そうには見えない。そこがいいんだろうね。

だからこそ急激に環境DNA分析が世界中に広まったのだろう。著者の紹介紹介している論文だけでも2015年だけで約30件、その対象はブルーギル、コイ、ブラウントライト、アブラハヤ、ハクレン、etcetc。実に多様だ。そこでは水生動物だけでなく、陸生の動物の糞が河川に紛れて検出される例もある。
このようにして、その地に何が生きているのか生きていないのか、大げさな捕獲作戦を展開する必要もなく把握できる。特に今まで「生きていない」ことを証明することは容易ではなかった。いわゆる悪魔の証明だ。ネッシーは絶対にいないことを証明するためには、ネス湖の水を全部干さねばならなかったのだ。ロンドンブーツ、やってみる?
これが環境DNA分析の登場で一変する。例えば吉野川水系にニホンカワウソが生息していないことは、ニホンカワウソのDNA解析結果と比較すれば、吉野川の水コップ一杯で証明されるのだ。例の対馬のカワウソがニホンカワウソではなかった件は、糞を直接分析したので環境DNAとは呼ばない。

じゃあネッシーは? ネッシーのDNAが入手できれば一発だよ。誰か採取してきてくれる??
真面目な話、ネス湖の水に含まれる環境DNAが全て既知の生物のものであり、他の謎の生物のDNAが検出されなければ、謎の生物すなわちネッシーはいなかったと証明できるだろう。それも大変だろうけど。。。


では次回、日本で行われた環境DNA分析の結果を、何例か紹介していこう。

41.北浦で何が起こっているんだ?

ずっと追跡している北浦上流部のアルカリ水問題。またも安塚観測所で奇怪なデータが観測されてしまった。
もう何がなんだか・・・

水質20190510

これは5月10日の安塚観測所の水質データだ。
(国土交通省 川の防災情報:
http://www.river.go.jp/kawabou/ipSuisituPast.do?init=init&obsrvId=2127000600008&gamenId=01-1105&fldCtlParty=no )

GW前半、関東は雨が続いた。後半は一転して晴天が続き、5月10日は全国で夏日となる最高気温が記録された日だ。
その日まで安塚のpHは上がる一方だった。5月9日には最高pH11.8、10日の8時にはなんとpH11.9に達している。なんという強アルカリ性だ。バス、溶けちゃうよ。
それがなぜか10日の9時から17時まで安塚観測所は閉局されていて、自動測定されるはずのデータはなし。そして18時に突然pH9.7が測定された。同時に8時に9.7であったDO(溶存酸素濃度)は、18時に11.7と測定されている。5月11日以降のデータも、10日に再開された測定データを引き継ぐようなpH10弱、DO10前後のデータが続く。

なに? 何が起きたの??

気象データを見てみよう。
気象20190510

気象庁の過去データから引用した5月10日の気象データでは、6時から17時までフルに日照時間があり、気温は10~16時まで24℃、13時に最高気温25.7℃を記録してる。降水量はもちろん0mm、風速は最大3.8m/s、基本的には南東の風だ。
晴天、南東の弱風、雨はなし。それならば北浦最上流部、安塚では植物プランクトンの活動が活性化し、しかも風により安塚方向にプランクトンが吹き寄せられるのが普通だ。するとどうなるか。pHは上昇し、DOも上昇していく。そう考えるのが普通だ。

しかし安塚の測定データは真逆。pHは下降し、DOは上昇した。なぜ? 何が起きた??

もう少し気象状況を深堀しよう。下図は5月の鉾田の1日ごとの気象データだ。
鉾田では5月1日にまとまった雨が降った後、2日から6日まで晴天、7日に弱い雨が降り、8日からは再び晴天が続いた。気温は雨の降った7日を除いて最高気温20℃を超えており、10日に26.1℃となった。風は平均で2m/s前後、最大風速でも4~5m/sと特に強風があった訳でも、無風が続いた訳でもない。

気象201905

39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る」では、水質がアルカリ化する要因として、
 (1) 石灰等の化学肥料が流域で使用された。
 (2) 打ち立てのコンクリート等から溶液が漏れた。
 (3) 植物プランクトンの活性が高い。
の3項を挙げた、
そして私なりの結論として(3)をチョイスした。しかし5月10日のデータはどうか。気温がこの春最高となった日に植物プランクトンの活動に伴うpH上昇が、逆に降下に転じることはあり得ない。むしろpHはより上昇するはずだ。

一方、(1)(2)の仮説が起きたのであれば、pHが上昇すると共にDOは減少する。例えば恒常的に(1)(2)にような汚染水が流入していると仮定すると、そこに清浄な水が流入したと仮定すれば、pHは下降すると同時にDOは上昇するはずだ。

なんだって、「39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る」は根本から検討し直さなければならないのか?

あ”~、分からん。辻褄が合わなすぎる。それに(1)(2)では、それ以前のpHとDOの変化が説明できなくなる。何より、晴天が続いた5月2日以降の水質変化、特に10日のデータ中断前後の水質と気象の関係からは、そこで突然、データが飛躍する事が説明できない。


私が苦し紛れに考え付いた答えは、
安塚観測所が閉局になっていた時、測定器を校正しpHとDOセンサを調整し直した。」

何とも安易な答えだが、そうとしか考えられない。閉局前のpH11.9という値はあまりにも極端すぎる。ひょっとしてpHセンサが異常だったんじゃないのか?それを観測所の担当者が気付いて校正し直した。その結果、作業時間中の測定データが表示されず、作業後のデータは作業前のものと飛躍した値になった。
(これは確定じゃないから。私の推定だから。念のため。)


このような事は実験や観測ではたびたび起こる事ではある。技術者や科学者はこういったノイズデータに惑わされないで分析を進める事も重要なのだ。
バス釣りだって同じだよ。なぜかたまたま釣れてしまった1匹のパターンを信じてやり続け、以後の一日を無駄に過ごした経験、あなたにもあるでしょ。ましてやどこの誰だか知らないバサーの昨日の釣果を頼りにする釣りなんて、つまらないよ。やめやめ。

40.魚のアルカリ耐性について

(汚染汚濁物質の魚類に及ぼす影響;小田,宇野,生活衛生11-4)

39.北浦上流部が強アルカリ性になった原因を探る」で、北浦上流部安塚周辺でpH10.5というとんでもないアルカリ性が測定されたことを紹介した。そんな所に魚はいない。そう結論付けた。
でも実際には魚はどの程度までアルカリ性に耐えられるのか?
今回はこれを調査する。

大阪市立衛生研究所の小田,宇野は、魚類の水質に対する強弱を実験により確かめた。
実験で想定したのは工場排水によるpHの変動。鉱山や製鉄、メッキ工場等からの排液は、硝酸、硫酸、リン酸等の混入により酸性化している可能性がある。また皮革、化学薬品工場、セメント工場等からの廃液は、苛性ソーダ、水酸化カルシウム等によりpH12~14の強アルカリ水が混入している可能性がある。
もちろん今日の日本では、水質汚濁防止法により工場等からの排水はpHは5.8~8.6に収まっていなければならない旨の規制があり、上記にような極端な例は(少なくとも公には)あり得ないはずだ。
鉾田市にはセメント工場や電材工場等があるが、それらが原因だとは思わない。

それには船越らの示した「セメントによる水質変化と魚に及ぼす影響の基礎的研究」(船越ら,砂防学会誌,Vol.55,No3,2002)が参考となる。
これによると水にセメントが混入した時の溶液のpH変化は図6の通り。比較的短時間でpH10を超え、pH11前後で飽和値に達する。


40-fig6 pH

そしてpH上昇と同時にDOは低下していく

40-fig7 DO

ここが北浦上流部で発生しているpH上昇の現象とは相いれない。即ち安塚観測所のpH上昇の原因はセメント混入とは考えにくい


小田らの実験の結果に戻ろう。小田らはpHを調整できる水層中での魚の行動および生存時間を調査した。
40-図3トゲウオ

図3ではトゲウオを用いてpHの違いによる魚の感応度を調査した。それによるとトゲウオは酸性側ではpH5.8以下で著しく嫌忌度が高まり、アルカリ性側ではpH7.0~11.0ではほとんど感応を示さないが、pH11.4以上になると著しく嫌忌度が高まった。

40-図4ニジマス

またニジマスによる実験ではpH4以下の酸性、pH10以上のアルカリ性水では生存時間が短縮してくることが分かった。
またラージマウスバスでの実験ではpH10.4~10.5流水中で7日間生存し、pH11に上昇した時、2~5時間で死亡した


魚種によりアルカリ性に対する耐性は異なるものの。pH10.5という高アルカリ下では魚は忌避行動を示すことが分かった。
このアルカリ化の原因については植物プランクトンの活性化と推察されるが、ここまでの調査では確証はない。おそらくアオコのように極表層面で植物プランクトンが活性化し、それに伴うpH上昇を上層を測定している安塚の自動観測機が捉えたものと思われる。
ならば極表面水のみの現象であり、下層部はより中性の水が占めている可能性もある。

アオコ発生時の下層水の水質が問題となるな。文献調査を進めなければ。
いや、これは現地に行って調査が必要だな。
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