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プロフィール

ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

2年連続だ。 「琵琶湖の深呼吸:全層循環、今年も確認されず」

やはり今年もか。。。
京都新聞の4月2日付け記事に
「琵琶湖の深呼吸」全層循環、今年も確認されず 暖冬影響か
と言う記事が掲載された。2019年に続き2年連続だ。

全層循環とはバサーにお馴染み、ターンオーバーのこと。昨年も「琵琶湖がターンオーバーしていない事の影響について」で述べたが、今津沖の水深90mの第一海盆で、例年であれば冬季の表層の冷却により水底までの水が表層の水と循環して発生する全層循環が起きなかったのだ。
そして滋賀県の見解として
県琵琶湖保全再生課は「昨年同様に暖冬で、表層と底層の水温差が縮まらず混ざりにくい状況だった」と分析。ヨコエビなど湖底生物への影響は確認できていないが、全層循環の未確認は「未知の状況」だとして、今後も継続的な調査を続ける。
としている。

img_8715a1ffacdd7f104d937b948f0fe75180964.jpg
     (京都新聞より)

本当に生態系への影響はないのだろうか? もう少し深堀していこう。

ターンオーバーの正体については「3.琵琶湖における水温、水流の年間変化」で詳しく述べた。夏季に温められた表層と、水温の低いままの底層の間で発生するサーモクラインが、冬季の気温低下に伴う表層水温低下により底層の水と温度差がなくなり、全層にわたって還流が発生する。同時に溶存酸素を使い切ってほぼ酸欠状態となっている底層に、表層の豊かな酸素が供給され、逆に表層にはプランクトンの栄養源である硝酸態窒素が底層より供給される。
自然の摂理とは実にうまくできているのだ。しかしここに人間の手が加わると、自然界はバランスを崩してしまう。ここでは地球の温暖化が影響したのであろうか。

表層と底層の水質の季節変化を深堀していこう。
滋賀県琵琶湖環境科学研究センターでは通年にわたって琵琶湖の各地点で水質観察を行っており、そのデータを公開している。下図にそのデータから、過去3年間の今津沖の表層と底層の水質の季節変化をグラフ化して示す。

2017年度

2018年度

2019年度

2017年度は例年通り、1月以降に底層の溶存酸素濃度は急上昇し、表層と同レベルとなった。これは1月以降に底層以浅の水温が低下して底層と同じになり、全層循環が発生した事を示している。
一方2018年度においては、3/4,5の溶存酸素濃度が一度上昇しているものの表層と同じレベルには至らず、以後再び低下に転じた。
そして2019年度は、これも3/2,3に一度上昇したが、3/23のデータでは差が拡大している。ただしその差は2018年度に比べれば小さい。
3月下旬のデータでは溶存酸素濃度の表層-底層の差は、
 2017年度  0.7 (mg/L)
 2018年度  7.6
 2019年度  2.2
となっていた。今年は全層循環に至ってはいないものの、昨年に比べれば改善されていると言ってよい。

また2019年度は台風19号の影響で、19号通過後の10月中旬に一度、全層循環っぽい現象が観察されている。「47.「琵琶湖、台風19号の強風で深呼吸」の持つ意味」で取り上げた通りだ。
その時は、全層循環とまでは言えないものの、台風による強風の影響が底層にまで及び底層の溶存酸素濃度が上昇している。今春の琵琶湖底層の溶存酸素濃度が2018年度よりも高いのは、それが影響している可能性もある。


地球は確実に暖かくなりつつある。今後、琵琶湖において毎年のように全層循環が発生しないという現象が起こらないとも限らない。今年はその影響は小さいと言っても、毎年続けば間違いなく琵琶湖の生態系は変わってしまう。
自然のバランスを保つ事は難しい。我々も自然の恩恵を受けて生き楽しみ憩わせてもらっているのなら、せめて自分にできる範囲で自然を守る努力をしていこう。ゴミのポイ捨てなんて言語道断だ。

台風19号による利根川下流域への影響

台風19号の犠牲になられた方のご冥福をお祈りすると共に、被害にあわれた皆様をお見舞い申し上げます。実際に私の会社の宮城事業所の従業員の中にも、被害にあわれた方が多数いました。改めて水害の恐ろしさを実感しました。

私のホームレイクである利根川下流域も例外ではありませんでしたが、豊かな田園地帯に洪水の被害が及ばなかった事は不幸中の幸いでした。
あの日、霞ヶ浦・北浦をはじめとする利根川下流域はどのような状況なのか、その後どうなっているのかを調査しました。

large.jpg

まず史上最強と言われた台風19号の進路ですが、静岡に上陸し関東・東北を縦断するという最悪のコースをたどり、各地に大雨を降らせました。10月17日時点で死者77名、堤防の決壊は、59河川の90か所に上っています。  (国際気象海洋(株)提供
その雨量は神奈川県箱根町では12日の降水量が922.5ミリに達して国内最高記録を更新したのをはじめ、各地で記録的な大雨となりました。土浦気象台では10月12日の降水量が135mm、最大風速13.0m/secと記録されています。霞ヶ浦・北浦からは雨の芯は外れたのですね。

この影響を受け霞ヶ浦・北浦の水位は以下のようになっています。

グラフィックス1
国土交通省 川の防災より引用 

霞ヶ浦河川事務所のTwitterを見ても、利根川下流域は洪水を逃れたようで、何よりです。

それでも湖岸や河岸のコンクリート護岸は全て水没しました。1017日現在でもまだ水没したままです。

また常陸川水門は台風来襲時には高潮のため閉門されていたのですが、かなりの量の海水が水門を越えて常陸利根川に流入した模様です。その後の開門操作により海水の影響はなくなったとは思いますが。

 

では水質はどうだったのでしょうか?

同じく「川の防災」のHPから追っていきます。地点は「41.北浦で何が起こっているんだ?」でも紹介した北浦の安塚を取り上げます。

グラフィックス2

10/12 21時に台風19号により暴風雨圏となった北浦は、瞬時に濁度が上昇しCODも高まりました。水温、PHはこの時点では微動の範囲。10/13以降は濁度とCODは平常値にむかって減少し、PHは台風前よりも低下しています。水質的には魚類には好ましい状況となったと言えるでしょう。少なくとも「41.北浦で何が起こっているんだ?」で紹介したPH11.9などという悲惨な状況ではありません。

ちなみに北浦上流部の湖水がこのPH11.9という強アルカリ性の状態をいつ脱したのか、恥ずかしながら追跡できていません。我ながら飽きっぽいと言うか、無責任と言うか・・・

 

 

さて、一応釣りブログなので「では利根川下流域でどのようにバスを釣るんだ」という観点で考えてみましょう。この非常時に何を呑気なことを言っているんだ、と言うお叱りはごもっともですが、当分は空想上の Rocking Cheir Fishing ですのでご容赦下さい。

 

上述の通り水質的には、特に北浦上流部は劇的と言っていい程、改善しました。また(元々、霞・北では影響は小さいとは言え)フォール・ターンオーバーも一気に解消したと言っていいでしょう。水温は約20℃とこれも絶好。

また周囲の田んぼもすでに稲刈りを終えていて水はとうに抜かれているため、田んぼからの濁水の流入は多くないでしょう。あるとすれば収穫期である蓮田からの泥水の影響。しかしこれも逆に大量の雨水に薄められたのではないでしょうか?

 

こう考えるとバス釣りには良い条件ができたことになります。秋の乱食いシーズンに一気になだれ込んだことが期待できます。

ならばバスはベイトについて動き、さかんにフィーディングするのではないでしょうか。肝はベイトの位置だと考えます。5060cm上昇した水位は当分このままでしょう。すると今まで繁っていた岸沿いの水草は水没している。ベイトはここに集まっていると見ました。そこでは身も潜めるし、小さな虫などの餌になるものもある。通常は水深030cm程度だった超浅瀬も、今は1m近くあります。バスは十分に入ってこられる。

まずはこういったエリアを狙いたい。霞ヶ浦、北浦の水草エリアです。

 

支流や常陸利根川本流はさすがに流れに翻弄されてしまったのではないでしょうか。台風の最中はバスも本湖のディープやワンドの奥に逃げ込んでいたと思われます。そこから元居た場所に積極的に戻ってくるのか? 戻るべき要素があれば戻るでしょう。それは水温、水質、ベイト。しかし、どれをとっても今の時点でバスが積極的に支流等に戻るとは思えません。

私なら支流・本流は選択肢から外します。本湖一本勝負

 

 

今回は最初のお見舞い文から始めたので、終始「ですます」調になってしまいました。我ながら違和感がありますね。次回は元のぶっきらぼうな文体に戻します。あしからず。


外来生物 2020問題を考える-4:喰うか喰わせるか!

前回の「2020問題を考える-3」では、これまでの議論と生物多様性国家戦略の問題点について分析した。そして私個人としては、外来生物被害予防三原則ならびに生物多様性国家戦略は、その理念と精神には大いに賛同するものの、個別目標の一つである「2020年までに優先度の高い侵略的外来種が制御又は根絶」には賛同しかねる事を述べた。
その理由として、上記の生物多様性国家戦略にうたわれた個別目標が、現実性と経済性を熟慮した科学的アプローチなどとは無縁の政治的判断と言わざるを得ないからであると主張した。

OSK200901280059.jpg

ではどうすべきか。国として、などという大きいことを言うつもりはないが、一釣り人としてどうしていくべきなのか。まとまらない頭を整理しつつ、ツラツラと書いていきたい。

私の意見は揺るがない。
・外来生物の違法放流には断固反対。
・外来生物の繁殖・増殖にも反対。

そしてもう一つ、加えるに
・バスを無為に殺したりしない。

バスとは限らない。生きとし生けるものの命をただ奪う、ゴミ箱に捨てて焼却する、岸に打ち捨てて無駄に殺す。そんな事が許せないのだ。この点が釣り団体やバスプロ、多くのバサーの立ち位置とは少し違うだろう。私は Catch & Release 禁止でもいいと思っている。バス釣り禁止ではないのだから。それは禁止されようが許可されようが、アユやタイはリリースしない事となんら変わりはない。釣りとしてはごく自然な形態だ。
すなわち命を活かすのならCatch & Release 禁止は受け入れる
我々は他の生物の命を奪って己の命を繋いでいる。それは自然なことだ。魚を釣っておいしく戴く。アユやタイでできていることが、なぜバスではやらないのか?

これはバサーに問いたい。あなたはなぜバスをCatch & Release するのか?

バスフィッシングは Catch & Release がルールだから。」
本当にそうなの? あなた、そんなに暗黙のルールを守るいい子なの? バサーの品格、特にバス番組で無駄に騒いでいるバカプロ(あっバスプロでした)なんかを見ていると、ほとんど社会不適合者ばかりだけどね。そんないい子たちが漁港を荒らし釣り場をゴミだらけにしないと思うよ。
私がバス釣りを始めた頃、すなわちまだバスが日本に居ついたばかりの頃にはまさにそう叫ばれていたよ。常見忠師匠の本にも書いてあったし、我が開高健先生もモンゴルの大草原で巨大イトウを釣り上げた後、
チンギスハーンのものはチンギスハーンに。モンゴルの魚はモンゴルに。
なんてかっこいい事を言いながらリリースしていた。(「開高健の続モンゴル大紀行」より)

それに憧れた中学生がCatch & Release を心に刻んだとて不思議ではあるまい? じゃあ川辺で変な造花の棒を振り回して叫んでいるバスプロは?どうしてリリースするの?

バス業界のためバスを増やしたい。もっと大きくしてまた釣りたいから。」
プロや業界の人間はそう思うだろうな。素人衆もそうなのかな? だったらアユやタイでもリリースしそうなものだけど・・・
ヘラブナは完全にそうだよね。バス以上に完全にゲームフィッシュだし。ちなみにヘラブナもまた、ほとんどの地方では立派な国内外来種だから。元々その湖にいたなんてことはまずない放流魚だから。さあ、これからヘラブナがどう扱われていくかにも注目しよう。

釣ったはいいけど始末に困る。食べられないし、飼える訳でもないし。」
正直、これが本音だろうな。アユもタイもおいしく食べられるからリリースしないんだよね? いわば海で釣れちゃう外道、それもゴンズイやフグみたいな嬉しくない外道と同じなのだ。

だったら食べればいいじゃん!
食べられるようにすればいいじゃん!!
少なくとも、食べさせればいいじゃん。


ブラックバスを食べたことありますか? 芦ノ湖のバスは文句なくおいしい。湖畔で釣り&キャンプをして、バター焼きで食べたバスはうまかったよ。
湖畔のレストランでブラックバス定食なんて出しているくらいだから、問題なく食べられる。元々そういう魚なのだ。例えば芦ノ湖畔のほん陣。琵琶湖博物館内のにほのうみ

これが榛名湖のバスになると臭くて食べられたものじゃなくなる。同じようにきれいな湖水をしているのに。
なぜか? 榛名湖のバスは腹にワームを溜め込んでいるから。バスを捌いた途端に臭い匂いが鼻をつく。食べるのをあきらめて捨ててしまった。ごめんね、バス君。

ここでふと思ったことがある。
琵琶湖のバス回収Boxのバス達はどうなるんだろうう。建前上は飼料に加工して養殖魚や家畜の餌になることになっている。私的にはバスの命を他の魚や家畜に与えており、ギリギリ許容範囲かな。家に持ち帰って猫の餌にするなんて、全然OK!
しかしバスの腹に溜まったワームはどうしているんだ? まさか全部粉砕して家畜や養殖魚に与えているんじゃないよね? そんなことをしたらプラスチックが永遠に生物の体を循環することになる。
ちゃんと捌いて腹ワタは処理しているんだよね? まさか飼料に再生するなんて大嘘で、焼却しちゃっているんじゃないよね???


さて食べられないからリリースする派の人達に提案する。
だったら誰でも食べられるようにすればいいじゃん。食べたくなるような魚にすればいいじゃん。簡単なことだ。

・ワーム禁止

それだけでバスはうまくなる。加えて湖底に打ち捨てられるワームもなくなる。バスフィッシングはハードルアーとワイヤールアーオンリー。な~に簡単さ。50年前に私がバスを始めた頃に戻るだけだ。「ルアーフィッシング黎明期」にも書いた通りだ。

できればハードルアーも木製オンリーになるといいね。そうすれば残念ながら根がかってしまったルアーでも、数年で自然に帰る。それに高価なルアーなら釣り人も必死で回収するでしょ。ワームなんかすぐ捨てちゃうもんね。
エコタックルとか言っているJBさん、割高のでかいだけのプラスチック製プラグを売っているメーカーさん、考えてみてはいかが? プラスチックのでかいだけのルアーを5000円以上も払って買うくらいなら、手の込んだ木製ルアーを10000円で買いたいな。

エコタックルにしてもJBプロの中には「トーナメントでは義務付けられているから使うが、それ以外では使わない」とかしゃ~しゃ~とブログに書いている人間がいたりして、何のためのエコタックルなのか子飼いのプロ達でさえ納得させられない状況だ。

なので己の今後のスタイルは決まった。

ハードルアー一本!

釣りは難しくなるかもね。いいじゃないか。バス釣りはもっと難しくていいんだ。

外来生物 2020問題を考える-3: 賛成・反対がっぷり四つ!

前回の「2020問題を考える-2:生物多様性国家戦略」までで、外来生物をめぐる2020年問題の背景と概要を述べた。そして私の予想として
・滋賀県条例と同等の条例が全自治体で制定される。
・バスのリリースは禁止される。

と言う暗い将来を挙げた。

生物多様性の根本理念について異論を唱える人は(少なくともマトモな人間には)いないだろう。ジャングルを際限なく焼き払い畑にする、サンゴ礁をどこまでも埋め立てて基地にする、アマミニクオウサギの住む島にマングースを放つ、ヤマメやイワナの泳ぐ清流にスモールマウスバスを放流する。そんなことを際限なくやっていたら地球はどうなってしまうか。マトモな人間なら分かるはずだ。
しかしここで「総論賛成 各論反対」という人間が現れる。それも山ほど。私もその一人かもしれない。

「そりゃあサンゴ礁は大切にするに越したことはない。しかし辺野古の基地移設は防衛上も外交上も必要なのだ。そのためにサンゴ礁やジュゴンを犠牲にするのは致し方ない。」
「そりゃあアマミノクロウサギが天然記念物なのは承知の上だ。しかしハブの被害を軽減するためマングースは必要だ。クロウサギは絶滅なんかしないだろう。」
「そりゃあスモールマウスバスは元々住んでいた魚達を食べるだろう。しかしバスによる食害なんて大した問題ではない。釣り業界の権益と釣り人の自由を奪うな。」

私はここまで愚かではないつもりだが、生きとし生けるものとしての外来生物の命の尊厳(大げさな言葉だ)を踏みにじってまで守るべき多様性って何だ、とも思う。
なので、生物多様性国家戦略で示された
2020年までに優先度の高い侵略的外来種が制御又は根絶
という文言を見ると怯んでしまう。

こういう時には原理原則に立ち戻ろう。

外来生物被害予防三原則
1.悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
2.飼っている外来生物を野外に捨てない
3.野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない


まったくその通りだ。どの条文にも全面的に賛成する。
日本各地にフロリダバスを放ち、北海道にまでスモールマウスバスを違法放流する人間は、いったい何を考えているのか? コソコソと暗闇でバスを放流し、ネットの陰に隠れて理屈にもならない中傷を繰り返す。恥ずかしくないのか。そういう人間は顔を明かして公の場で議論してみるがいい。

私の意見は揺るがない。
・外来生物の違法放流には断固反対。
・外来生物の繁殖・増殖にも反対。

何度も言うがバスフィッシングはもっと難しくていい。必要ならば金が掛かってもいい。
そう思っている。JBや全釣り協がいやいやながら外来生物法を守ります、と言っているのとは訳が違う。本心からバスをこれ以上増やすべきでないと考えている。

バス擁護側の意見を少し紹介しよう。これが意外なほど黙り込んでいるのだ。特定外来生物被害防止法の成立直後の2005年から数年間は、キャンペーンと言えるほど大々的にバス擁護論を展開してきたJB日本釣振興会もここ数年は無言を通し、「ルールには従いましょう」と呼びかける。公的団体としては当然と言えば当然なのだが、なんとも弱腰だ。
 
かの今江克隆も外来生物法成立前後は勇ましくアジっていたのだが、最近は・・・

その論調は「バスを守れ。釣り人の自由や業界の権益を確保しろ。」と叫ぶばかりで、釣り人以外の人達に訴求できるポイントを欠いていた。これでは生物多様性を守るという御旗の前では無力だろう。


一方で2012年策定の生物多様性国家戦略には、
「2020年までに、侵略的外来種及びその定着経路が特定され優先順位付けられ優先度の高い種が制御又は根絶される。」
と明記されている。そしてその「優先度の高い種」がバス・ブルーギル等なのだ。
その「優先度の高い種」に選ばれた基準をもう一度確認してみよう。基準は5つ。
①生態系に係る潜在的な影響・被害が特に甚大
②生物多様性保全上重要な地域に侵入・定着し被害をもたらす可能性が高い
③絶滅危惧種等の生息・生育に甚大な被害を及ぼす可能性が高い
④人の生命・身体や農林水産業等社会経済に対し甚大な被害を及ぼす
⑤防除手法が開発されている、又は開発される見込みがある等、一定程度の知見があり、対策の目標を立て得る。

このうちオオクチバスは①~⑤の全て、コクチバスは①②③⑤に該当し、緊急対策外来種と認定された。①②③は納得するしかない。バスの食害はある。生態系に影響がない訳がない。このブログでも、ある条件が揃えばそこにいる在来種を根こそぎ食い尽くすことも確認されている。それは例えば閉鎖性の強い小規模湖沼で、湖岸に水草や葦などの小魚の隠れ場所のない水域だ。そこではバス侵入から数年でまさにバスしかいなくなる事が確認されている。
一方で在来種の減少はバスの食害が原因の全てではない事も事実だ。例えば「18.霞が浦北浦における過去20年間の水産有用資源減少要因 に関する考察」で紹介したように、霞ヶ浦の在来種激減はバスの食害などではなく、利根川水門の完成による霞ヶ浦の淡水化、およびそれに伴う水流の停滞に原因がある事が、科学的考察から明らかとなっている。

④はちと引っかかる。バスの場合は「農林水産業等社会経済に甚大な被害を及ぼす」部分が該当すると言うのだろうが、上述の通り霞ヶ浦の水産資源激減はバスの食害によるものではなく、琵琶湖についても同様の研究結果が紹介されている。また何より、日本人の食文化の変化により、例えそれら在来種が減らなかったとしても淡水域の水産業は衰退する運命にあった。あなたは最近、フナやコイ、モッゴを食べました?スーパーで見かけた?水産業は獲れないから衰退したのではない。売れないから衰退したのだ。琵琶湖・霞ヶ浦の漁業従事者の年齢を見れば、それは明らかだ。
(この辺は「琵琶湖の外来魚、捕獲量激減」で考察したので、参照されたし)

⑤はまさに政治的判断だ。どこに防除手法が開発されている? 何の対策の目標を立て得る?
環境庁の示した緊急対策外来生物は33種。そのすべてが⑤に該当するとなっている。いや⑤に該当する種が緊急対策外来生物に指定されたのだ。その中にはクマネズミやカミツキガメ、アメリカザリガニ、セアカゴケグモなどが含まれている。
どうやって? どうやってブラックバスやクマネズミ、アメリカザリガニを根絶すると言うのだろうか。防除技術が開発されていると言いきらなければ、根絶を目標とする緊急対策は打てないし、具体的に予算を取って活動を開始することもできない。ここは「開発されている」と言わざるを得ないのだ

ここが私が最も納得できない点だ。根絶できるはずのないものを「できる」と言いはって活動を開始するのだ。その歪は思いがけない形で跳ね返ってくるように思えてならない。本気で根絶しようと思ったら何をする? 網や釣りによる捕獲で根絶できると本気で考えているとは思えない。苦し紛れに考え付くのは遺伝子操作か毒物か。
例えばバスの繁殖を妨げるような遺伝子操作をした雄バスを放流するとしよう。思惑通りに事が運べばいいが、とんでもない生物が生まれたり、他の種に影響が出るなんて事もありうる。
例えば仔バスにだけ効果の出る毒物を流したとしよう。それが他の種、最悪の場合には人間に害が及ぶ事は絶対にない、なんて誰も言えない。まして遺伝的な悪影響で数代後まで害が及ぶことだってあり得る。


人間はいったいどれだけの生物を絶滅に追いやってきたのだろう。日本でだけ考えてみても、ニホンオオオカミ、ニホンカワウソ、コウノトリ・・・。生物を根絶するのなんてたやすいことだ。
おいおい、違うだろう。それらは根絶しようと思ってやった事じゃない。図らずも絶滅させてしまったのだ。では逆に意図して根絶した害獣・害虫はなに?
ウリミバエ、ミカンミバエは放射線を用いた不妊虫放飼法により根絶した。大量の不妊ミバエを放つことで自然界にいたミバエの繁殖の機会を奪ったのだ。沖縄で展開されたこの放飼法で放たれたミバエの数は実に625億匹! 沖縄だけでだよ。途方もない数が必要なのだ。

動物ではどうか。一部地域のカナダガン、タイワンザルの駆除が挙げられる程度。全国的に繁殖が確認された害獣・害魚が駆逐された例はほぼない。
それをやろうとしているのが今の生物多様性国家戦略なのだ。現実性と経済性を熟慮した科学的アプローチなどとは無縁の政治的判断と言わざるを得ない。

私が何より気にくわないのはこの部分だ。生物多様性の志は良しとして、ではそれは現実性があるのか。政治的プロパガンダで終わってしまうのなら、何もしない方がよっぽどまし。人間にとっても社会にとっても生物にとってさえもだ。

ではどうするべきなのか?
私自身の考えを次回で述べていく。

外来生物 2020問題を考える-2:生物多様性国家戦略

前回「外来生物 2020問題を考える -1: 愛知目標と外来生物法」においては、ブラックバスをはじめとする外来生物の2020年問題は、生物多様性条約に加盟する国により開催された国際会議:COP10で策定された「愛知目標」を起源とすること、日本においてはその達成に向けて2012年に策定された生物多様性国家戦略においてうたわれた国際的な約束事であることを示した。

そしてその生物多様性国家戦略では、20ある具体的な個別目標の一つ(目標9)として
2020年までに、侵略的外来種及びその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御又は根絶される。」
ことが掲げられているのだ。

では「優先度の高い種」とは何か?
環境庁は「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」の形でそれを示している。

環境庁の示した緊急対策外来種、重点対策外来種における対策の優先度の考え方(被害の深刻度に関する基準)は、以下の通り。
①生態系に係る潜在的な影響・被害が特に甚大
②生物多様性保全上重要な地域に侵入・定着し被害をもたらす可能性が高い
③絶滅危惧種等の生息・生育に甚大な被害を及ぼす可能性が高い
④人の生命・身体や農林水産業等社会経済に対し甚大な被害を及ぼす
(対策の実効性、実行可能性)
⑤防除手法が開発されている、又は開発される見込みがある等、一定程度の知見があり、対策の目標を立て得る。

このような基準により、該当する項目が多いとして選択されたのは
 植物 200種 うち国外由来 190種
 動物 229種 うち国外由来 209種 

環境庁HPより「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」を転載する。
(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list/gaiyou.pdf)

総合対策外来種

ここに示された国外由来外来動物のうちの55種が魚類
これがさらに細分化されていて、以下、魚類に絞って記載すれば、
既に国内に定着したと認められる「総合的に対策が必要な外来種(総合対策外来種)」は31種 で、その内訳は
 緊急対策外来種 4種
 重点対策外来種   2種
 その他の総合対策外来種 25種

これが個別目標9で述べられている「優先度の高い種」に他ならない。
では緊急対策外来種に認定された4種とは何か? ズバリ、
 チャネルキャットフィッシュ
 ブルーギル
 コクチバス
 オオクチバス

の4種である。

ちなみに魚類以外の緊急対策外来種には、タイワンザル、アライグマ、タイワンリス、カミツキガメ、セアカゴケグモ、カナダガン等の33種がリストアップされている。ノネコやアメリカザリガニ、クマネズミの名も見える。

また外来生物としては、既に定着してしまった総合対策外来種の他に、未定着と認定されている「定着を予防する外来種(定着予防外来種)」として魚類では16種あり、ガーやノーザンパイク、ナイルパーチ、ストライプドバスなどがリストアップされている。

具体的外来種が知りたい方は以下の環境庁自然環境局HPを参照。

すなわちオオクチバス等の4種は最優先で制御又は根絶されるべき種なのだ。
普通に考えればこれら緊急対策外来種全てを2020年までに根絶することは不可能だ。絶対に、と言ってもいい程に不可能だ。ならば行政はどうするのか? 国際的な約束事である生物多様性条約、それも日本が議長国を務め策定した愛知目標を反故にできるのか?

やはり何かしらの目に見える形での成果、根絶への道筋を付けることが最低限でも求められる事になろう。すなわちそれは、国または自治体としての法整備条例制定だ。これは避けられないであろう。滋賀県や宮城県条例のような形が国全体で採択される可能性が高いと考える。


ここまでが愛知目標とその具体策としての生物多様性国家戦略の成行だ。できるだけ私情を挟まずに論じてきたつもりだ。そして予言しよう。

滋賀県条例と同等の条例が全自治体で制定される。
バスのリリースは禁止される。


その時、あなたはどうするか? 私はどうするのか?
次回以降で自分に問うてみたい。

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