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プロフィール

ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

9.琵琶湖野田沼周辺におけるオオクチバスとブルーギルの胃内容物と糞中DNAによる摂餌生態の推定

         日本水産学会誌 78(1), 43-53(2012); 杉浦,田口 滋賀県立大大学院環境科学研究科

今回の論文も諸兄にはかなり興味深いはずだ。それは琵琶湖のバスを解剖して胃の中に何が入っているかを詳細に分析した論文だ。Match the bait 釣りの基本であるこの言葉を実践するならば、まず敵を知ることが重要だ。フライマンのようにその場で魚の胃から内容物をポンプアップするのも手だが(なんでバスではやらないのかな)、ここは研究者の手を借りるとしよう。(なんでやらないかって?たぶんグロいからだと思うよ。)
 まずは本研究の目的を理解しておこう。バサーには耳の痛いところもある。

 「 琵琶湖の年間漁獲量は外来魚が増加する以前(1970年代前半)の6500トンから漸減し、近年(2005~2009年)は1500~2000トンで推移している。中でもフナ類とモロコ類は1/6および1/25の漁獲量となっており、滋賀県はこれら在来種の種苗生産、放流事業に努めてきたが、資源回復の兆候は見られない。その原因のひとつに放流したフナ、モロコが外来魚に捕食されている可能性が考えられる。
 そこで外来魚の植生を把握するため、外来魚を捕集し、その胃内容物を調査するとともに、糞中のDNA分析により明らかとする。」

 外来魚が在来魚を捕食していることはまぎれもない事実だ。一方で在来魚の極端な減少が全てバスのせいかと言うと、そんなことはないという研究結果も出ている(そのうち公開するつもり)。ではどの程度、餌にされているかは科学的調査により明らかとなる。

「 調査水域は琵琶湖内湖の野田沼および江面川。面積0.8haで外来魚が多く生息し、ルアー釣りのスポットとなっている。2010年6月17日から9月10日まで、時間は10:00~17:00に投げ網で採捕した。オオクチバス、ブルーギル共に1日5~10匹を採捕し、合計オオクチバス152匹、ブルーギル74匹について胃内容物の調査を行った。
 内容物のうち、外形の残っている魚体については体長等を記録し、判別困難な内容物については耳石形状により種別判定を行った。特にフナについては、放流されたフナには耳石ALC標識を施しており、天然個体か放流体かの判別が可能である。
 さらに外来魚体を解剖し、肛門から採取した糞から餌生物由来のDNAを抽出し分析した。分析法にはqPCR-SSP法、クローンライブラリー法を用いた。
 このように検出した外来魚の摂餌生物種の内訳を、調査水域の魚類相と比較し、外来魚の各餌生物に対する摂餌選択制を求めた。」

 さあ耳慣れない言葉がたくさん出てきたよ。DNA分析法については置いといて(説明が大変だし、第一よく知らないし)、ここでは耳石標識なるものを説明しよう。耳石とは魚の頭部にある1対の骨で、成長に従い大きくなる時に年輪のような輪を作っていく。魚種によって形が違い、年齢や環境によって大きさや日輪(成長リング)も違う。耳石ALC標識とはこの性質を利用して、養殖魚に育成温度パターンや餌等により独特のリングを作ることを指す。もちろん魚を解剖しないと分からないが、いつどこの養魚場から放流された魚なのか識別できる。今放流されている魚はサケマスでもフナでも、ほとんどの魚に耳石標識が付いており、そのコードも公開されているらしい。そのうちのALC標識とは蛍光物質により特有のリングを作って、放流する魚を特定できるようにしたものだ。たいした世の中だねぇ。
 研究に戻ろう。

「 Table.2に調査水域において四手網と投網で採捕された魚類の数を示す。このうち在来魚は、ヨシノボリ、タモロコ、カネヒラ、ドジョウ、フナの稚魚等が多くみられた。魚類以外ではスジエビ、ヌマエビ、アメリカザリガニ、カエルの幼生、タニシが多く見られた。
 投げ網で採集したオオクチバス全152尾、体長9.2~41.9cm 体重20.0~2025g。ブルーギル全74尾、8.2~13.0cm 体重26.3~120.7gであった。このオオクチバス152尾とブルーギル74尾について、胃の内容物を分析した。 
 四手網ではオオクチバスの稚魚が214尾、ブルーギルの稚魚が243尾以上採集された。」

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「 Table.3に解剖したオオクチバスの胃の内容物をまとめた。オオクチバスの胃内容物は14%が空胃、77%が魚類を捕食。ヨシノボリが22%、アユが17%、フナが13%。エビ類が49%であった。」

9-Table3j.jpg

「 同様に解剖したブルーギルからは74%で植物性餌料、昆虫、貝、エビ、ヒル等多様な生物が確認されたが、魚類は2匹のみで、ヨシノボリであった。」

9-Table4.jpg

「 オオクチバスの摂餌選択性指数を計算したところ、アユ、ワカサギ、ハゼに対する選択制が高く、フナやドジョウは低い。さらに四手網でオオクチバスやブルーギルの稚魚が多く採集されたにも関わらず、解剖したバスの胃内容物からはそれらは検出されていない。

 昼間の透明度の高い水中では、オオクチバスが鮎を捕食することは難しい。アユは遊泳力、視力ともオオクチバスに勝っており、朝夕の薄明り状態の下か、濁った水中でなら捕食できるだろう。また冷水病に罹患する等で弱った鮎なら捕食される可能性がある。

 オオクチバスのエビ類に対する摂餌選択性は、スジエビに対して高く、ヌマエビはほとんど捕食していない。逆にブルーギルでは、ヌマエビのDNAが多く検出され、スジエビとテナガエビは全く検出されない。これはオオクチバスの視力は昼間弱いが、夜間でも大きく悪くならないため、夜行性のスジエビ・テナガエビを見つけやすい。一方ブルーギルは昼間の視力はよいが、夜間は大幅に低下する。またブルーギルは植物性餌料を多く取るため、水草に住むヌマエビに対する選択制が高くなると考えられる。」

 どうですか。めっちゃ参考になるでしょ。バスを狙うならアユ、ワカサギ、ハゼカラーだよ。更にクリーンウォーターの真昼間にアユルアーを投げるのは考え物ということも示唆されている。やるのなら傷ついたアユをイミテートするのが得策だ。
 そしてエビ。真昼間にはエビも薄い線みたいだよ。まあワームは何をイミテートしているのかよく分からないものも多いので、あまり意識しなくてもいいのかも知れないけどね。ギルや子バスも食べていないようだ。

「 Fig.1にはオオクチバスの体長(x軸)と被食魚の体調の関係を示す。両者の間には正の相関が表れており、大型のオオクチバスは小型の魚類を捕食しない傾向にあることが示された平均すると、体長150mmのバスは30mmの魚を食べ、300mmのバスは80mmの魚を食べている。大型魚は小型の餌生物を捕食しない
 また餌魚のサイズと追いかけ距離との間にも正の相関がある。すなわち小さい餌は近くないと捕食しないが、大きな餌ならば離れた距離からでも追いかけて捕食する。濁度が高くなると小さな餌を捕食しなくなる。小さなヨシノボリが多く捕食されていたのは、捕えやすさや捕食者の好みが関係していると思われる。」

9-Fig1.jpg

 Big Bait, Big Bass! なぜか知らんが喜んでいるご仁もいるのではないか? 大丈夫。あってますよ。正解ですよ!求められた近似式は、
Y=0.355x - 20.353
なので、400mmのバスなら120mmのルアー、500mmのバスなら157mmのルアーとなる。
 さて杉浦らの結論を示そう。

「 結論として、1年魚以上のオオクチバスは比較的大型の魚類、ヨシノボリ、スジエビなとを捕食しており、在来魚稚魚への食害は低い。しかし0年魚のオオクチバスは孵化後34日で体長25~30mmとなりプランクトン食から魚食性に転換、30~40mmとなる7月以降には盛んに多種の稚魚を捕食するようになる。体長40~50mmのオオクチバスは、14mm以下のコイの稚魚を1日に10~18匹捕食する。よって繁殖期に在来魚の小型稚魚を放流することで1年魚以上のオオクチバスの捕食を避け、7月以降では0年魚に捕食されない程度まで放流魚が成長していることが必要となる。」

 なるほどね。バスの0年魚が小型のフナを捕食しているかについては推論の域を出ないのだが、成長期のバスが大量の小魚を捕食していることは確かなので、リスクを減らす方法としてはリーズナブルと言えよう。
 バスと在来魚の関係については、近いうちに十分考察してみたい。論文は山ほど出ている。

 

8.オオクチバスの釣られやすさに見られる個体差

(日本水産学会 75(3),425-431(2009)  片野, 水産総合研究センター中央水産研究所)

 今回の論文はとっても分かりやすい。そして諸兄にはとっても興味深いものだと思うよ。その名の通り、バスの釣られやすさに関する研究だ。もちろんヘッポコバサーのホラ話じゃなくて、ちゃんと実験と解析に基づいた「論文」だ。心して聞いてくれ。
「ここのバスはすれちゃって、口を使わないよ。」
「先行者が叩いたポイントだから、少し休ませてからチェックしよう。」
 みんな分かったような分からないようなことを言うよね。バスに聞いたの? 今日はバサーが多くて落ち着かないって言ってた? 先週釣られて、もう二度と釣られないよ~って言ってた? 分からないでしょ。
 ほんとはどうなの? 一度釣られた魚は二度と針には掛からない? ちゃんと仮説を立てて立証した研究者がいるんです。理論に名前まで付いている。

 片野は、湖で捕獲したオオクチバスを実験池に放流し、それを定期的に色々な方法で釣って記録を残すという実験を行った。実験に用いたバスは、体長18~26cm、142~482gのオオクチバス65個体。この1匹1匹のひれの一部を切除し個体を判別できるようにして、40*5.3mのコンクリート池に放流した。場所は長野県上田市の中央水産研究所上田庁舎、実験期間は2007.9.3~10.1までの28日間。そして釣り人(筆者である片野)1名が1日おきに6時間釣りを行い、釣法毎に釣れた魚の記録をつけていく。釣法は4種類。
A.B. 餌釣り。8.5m渓流竿に道糸・ハリス1.5号がまかつ製ニジマス針10号。ミミズ(A)もしくはスジエビ(B)
C. ルアー釣り。ルアーロッド、ライン2号、DECOY製フック15-2 Gary YAMAMOTO Custom Bait 3.5” Kut Tail
D. 生餌釣り。ルアーロッド、ライン2号7~10cmのウグイ

 最後に試験池の水を抜いて全ての魚を回収し、再び体長・体重を測定する。
なんか楽しそうだよね。みんな水産研究員になりたいって思ったでしょ。でも仕事だから、仕事。さて、このようにして収集したデータを基に、解析・考察を深めていく。ここがヘッポコバサーと違うところ。

 Table.1を見てみよう。ここには1日おきに行われた採捕(釣りのことね)で各日に何匹釣れたかを示している。試験されたオオクチバスは1日に10~23回、実験期間中にのべ126回釣られた。2回目の採捕までは20匹以上釣られたが、3回目以降は7~14匹に減少。実験が進むにつれ釣られる個体が減少する傾向が見える。

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 Table.2には4回以上釣られた7匹についての釣法を示している。ミミズでは1回しか釣れず、生き魚が最も釣れている。ワームでは4回だった。2回目の採捕まではどの釣り方でも釣れたが、3回目以降はワームとミミズでは1匹もつれず、エビとウグイでのみ釣れた。126回中14回針の飲み込みがあり、この場合はハリスを切った。針の飲み込みによる死亡は認められず、同じ個体が2回飲み込むことも3例確認された。

Table2.jpg

 Table.3には全ての個体についての釣られた採捕回数を示している。片野はバスの釣られ方から個体を4種類に分類した。すなわち、注意深い個体(careful)、学習する個体(learnable)、釣りやすい個体(fishable)、その他 の4種だ。
Carefulは、一度も釣られなかったか、最終捕集日に1回だけ釣られた個体。Learnableは、実験開始後1回だけ釣られ、その後連続して釣られなかった個体。Fishableは、調査機関を通して3回以上釣られた個体。その他は、それらのいずれにも該当しなかった個体である。
 その結果、注意深い個体が8尾、学習する個体が10尾、釣られやすい個体が16尾、その他が31尾いたことになる。
 釣られやすさや学習の有無には個体差があると認められるが、3つのタイプの間で体長に有意差は認められない。すなわち、大きなバスが慎重であり釣られにくいという傾向は、この実験からは見られない
 同じ個体が1日に2回釣られることが3例あった。3回のうち2回は同じ個体によるもの。
実験期間を通じて釣られた回数は個体によって0~8回と大きくばらつく。1度も釣られなかった個体が4匹認められた。
 ここでは2度釣られた個体の、釣られたタイミングに注目したい。上記の通り1日に2度釣られちゃう奴もいるが、多くは1度釣られるとその後の採捕4~7回の間は釣られておらず、日数にして8~14日あけた後に釣られるパターンが多い。

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 バスの社会も人間様と同じ、多様化しているんだよ。慎重な奴もいれば用心深い奴もいる。だからおもしろいんだ。バスフィールドでは今も基本的には Catch & Release が行われているので、この実験と同じような条件となる。
「ここはワームじゃなくてクランクでしょ。」
「Kut Tailよりもクローを試してほしかったな。」
言いたいことは分かるが、そこが主目的じゃないから。理解してね。でも釣られやすい7匹で延べ32回釣れている中で、ルアーでは4回しか釣れなかったというのが事実だ。やっぱりバスは主にベイトフィッシュを食っているんだよ。この事実は在来魚種への影響という観点では、考えねばならないことだろう。

 片野による考察に戻ろう。実験期間中の体重の増減は、-19.6~117.5gにばらついた。Fig.4には個体の体長と成長率との相関を示した。個体の体長と成長率の間は負の相関を示した。すなわち小型個体ほど成長率が高いという、魚類一般の傾向を示している。
 Fig.5には各個体の釣られた回数ごとの、試験期間中の体重増量(上図)と、体重増加率(下図)を示す。両者の間に相関は見られない。すなわち注意深い個体だから育ちにくいとか、釣られやすい活発な個体だから大きくなりやすいといった傾向は見られない。

Fig5.jpg

 釣りを続けると釣獲率の低下が個体群の減少よりも急速に起こる。この現象の理由として、Martinは、一つの魚群の釣られやすい個体が減って、釣られにくい個体が残るためという事を示唆した。これをMartin仮説と呼ぶ。今回の実験でも、仮に一度釣られた魚を池に戻さずにいたら、日を追うごとに釣獲率が下がったはずだ。Martin説は成り立っている。

 またBeukemaは、釣り針から逃げたり、釣られた後に再放流された魚は、釣られた経験を学習して針について餌を忌避するようになるという、学習説を唱えた。
 オオクチバスは全体として、学習により釣られにくくなったと言える。学習する個体がいる一方、学習せずに何度も釣られる個体や、そもそも用心深く一度も釣られない個体もいる。オオクチバスにおいてもBeukema説が当てはまる個体が存在すると言える。ただし全ての魚が該当する訳ではない。


 さて諸君、どう考えますか。1日に2回も針がかりする陽気なバスもいる反面、1回も釣られることのないバスも多くいる。そして1度釣られてしまうと、その後1,2週間は釣れないという傾向も見られる。我々が相手にする「標準的な」バスならば、やはり一度針がかりした魚は連続的には釣れない。それは自分が釣り損ねた魚ばかりでなく、土日に釣られた魚を次の日に釣ろうというのは難しい、ということを示している。
 妥当な結果といえばそれまでだが、ちゃんと実験と解析を通して得られた結論にはそれなりの重みがある。科学論文、やっぱりおもしろいわ。

7.北浦におけるウィードの分布について

 このページを書いているのは11月。湖も海ももう冬の気配が近づいてきて、バスたちも秋の乱食いも終わり静かに冬ごもりを待つ。そんな気配。 しか~し、ロッキンチェアアングラーには無用の心配。彼の心はすでに春のうららかな湖に飛んでいる。どーだ!この自由気ままな思考回路は!

 春と言えばスポーニング。そしてウィードの成長・拡大。
ウィードといえば僕のホームグラウンド、北浦について、かねてから不思議に思っていることがある。
「北浦のウィードはなぜ東岸に集中しているんだろう?」

 北浦のウィードエリアはなぜか東岸に集中しており、ドック内がリリーパッドで埋め尽くされるなんていう風景も東岸にのみ見られる。なぜなんだろう?今回はこの謎に迫る。

 いくつかの仮説が考えられる。
①河川の流入
 一説によると、東岸に流れ込む河川の方が、西岸より多いという。そうであれば、それによる新鮮な水、ミネラル分の供給はウィードによい。
 だが、本当だろうか?流域面積から考えれば、東より西の方がどう見ても広く、少なくとも流入水量は西の方が多い。実際、河川の作った大きなワンドは、前川、蔵川、山田等々、西に集中している。しかしその水域にウィードは少ない(よね)。
 とすると、この説はちょっとマユツバ。あるいは西岸は、水量も多いが田んぼからの殺虫剤、除草剤も多くて、ウィードが育たないという見方もある。だったらバスも西には居着かないな。
うぅ~ん?

②日照
 北浦はほぼ南北に細長い湖だが、わずかに西北~南東に傾いている。これにより西岸は日照条件が東岸より良い。
 当然の推論であろう。だがより狭い範囲で考えると、どうもあやしい。
例えば西岸にもワンドになっている北岸の部分は多い。そこの日照は当然、良いはずである。しかるにそこにウィードはあるか?否!
 なんでだろう?

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③海風山風
 僕の本命はこの説。
海沿いに延びる北浦には、日中の海風、夜間の山風が必ずと言っていいほど吹いている。即ち東岸は日中は風裏、夜間は風面になる。すると何がおこるか。
日中、ウィードは盛んに光合成を行い酸素を放出している。このとき(特に生育期の)ウィードにとって望ましい条件は、強い日照、高い水温、葉面に日照を遮る泥土・濁りのない水、といったところ。つまり日中は風裏である方が都合がよい。
夜間、ウィードはCO2を吸収する。水中に含まれるCO2は少なく、より多くの水量に葉面を接してCO2を吸収することが望ましい。つまり夜間はウィンディサイドの方が好条件となる。
 結果、北浦のウィードエリアは東岸に広がる。また同時に、この仮説が正しいと、水温については春先は東岸は西岸より高温になりやすいことになる

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④コリオリの力による水流
 No.4で紹介した琵琶湖に関する水流調査論文によれば、琵琶湖の湖水は地球の自転により生じるコリオリの力を受けて、反時計回りに1日約3周の大きな水流が生じている。北浦における確認はなされていないが、湖の規模からいって同様の水流が生じていても不思議はない。ただし北浦は琵琶湖と異なり、最深部でも8m程度と浅く、平均水深60mの琵琶湖とは湖水の総質量が違うため、そのまま当てはめるのは危険。
 仮説として反時計回りの大きな水流が存在すると、東岸のワンドの北岸は、「水流の陰」、「十分な日照」という条件が揃うことになる。北浦大橋上流のエリア、梶山ワンドのあたりはこのパターンか?
逆に西岸ではどの部分も、前記2条件のどちらかしか満足しない。北岸は水流の当たるサイドになり、泥水をかぶりやすいことになる。
 つまりウィードにとって理想的な条件は、東岸の北向きのサイドということになるのだが・・・


 まあ、こんなことを考えながら釣りをするのも、釣りの別の楽しみだと思う。もちろん水流や水温、日照等はウィードだけでなく魚の居場所にも大いに影響を与えるファクターであるから、その日その時の状況から上に挙げたような条件を当てはめていけるだろう。
 あっ、でも知らないよ。これは誰の研究結果でもない、僕の独断だから。

6. 魚の視力について

(中村,水中の濁りが魚の視力に与える影響に関する基礎的研究,東京水産大研究報告 Vol.76,Nos.1-2,1989)より

 魚の水中での視力ってどのくらいあるんだろう?
視角や色感覚については既に1.項と2.項で述べた通りだった。では視力は?人間のように視力1.5とか0.3とか言うんだろうか?実はちゃんと実験をした人がいる。
 魚の代表的な知覚は視覚、聴覚、触覚および嗅覚などであるが、ターゲットの近くでは視覚が圧倒的に行動を支配する。中村は水中の濁りと魚の視力およびターゲットの視認距離との関係を明らかにした。

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 実験にはコイを用い、水層に2カ所のゲートを設け、黒色のターゲットがある方のゲートにコイが来た時に餌を与えるように条件付けをした。図1に示した水槽が実験装置である。コイにこの条件付けを教え込むのに40日かかったそうである。40日しかかからないんだから大したもんだ。こうして条件付けしたコイが、どのくらいの大きさのターゲットまでを認識するかを、水の濁度を変えて実験していった。ターゲットの大きさは35~5mm。コイからターゲットまでの距離と、ターゲットの大きさからコイの視力が判定できることになる。人間の視力検査と一緒だね。その結果・・・
 コイの視力は、0.11。これが清水における結果である。かなりの近眼である。ちなみに他の研究者が測定した種々の魚の視力は、マハタが0.24、クロダイが0.14、金魚が0.05となっている。

 ところで視力とは何か知っています?
視力とは認識しうる最小のターゲットを見込む角度:θの逆数で表される。上のコイの実験では、コイは40cmの距離から最小1.1mmのターゲットを認識できた。これから計算されるコイの認識角度は9.5分(1分は1/60度)。この逆数が0.11になる。式を示せば
  視力:Ac=1/{120*tan-1(x/L)}
ここで、xは最小ターゲットの大きさ。Lはターゲットまでの距離。単位はmmに合わせること。tan-1はアークタンジェントを表す。

 視力がわかればある距離からどのくらいの大きさの物体を認識できるかが推察できる。このコイの場合、例えば50mmのものなら、18m先から認識できることになる。ただしターゲットの形は四角。ルアーみたいな細長いものはかなり割り引いて考えなければならない。まあ視力0.11の人に聞いた方が早いかな。でも以外に遠くから見えているんだよ。

 ただしこれは清水での話。容易に想像がつくように、水が濁れば見えにくくなってくる。中村は水の濁度を変えて、同じ実験を行った。水の濁り度合いは光束消散係数という値で表される。まあ光の届く割合と思っていい。この光束消散係数(単位は(1/m))を、清水の0.1から1.25,2.50,3.75と変化させていく。すると当然のように視力は落ちてくる。清水で0.11であった視力は、1.25,2.50,3.75(1/m)の水ではそれぞれ、0.10,0.09,0.07になる。ちょっとピンとこないけれど、相模湾の海水で光束消散係数:1.6、黒潮系水で約0.1だそうだ。すると光束消散係数:3.75は、相模湖くらいなのかなあ?北浦なんてどうなっちゃうんだろう。
 視力 0.07で計算し直すと、50mmのターゲットを認識できる距離は12mになる。仮にターゲットの面積が同じなら、同じ距離から認識できると仮定すると、50*15mmのルアーは6mから認識できることになる。同様に清水の場合の視力0.11なら、50*15mmのルアーは9mから見えている。

 ただしこの実験のターゲットは白地の上に置かれた黒色板であり、いわば最も見やすい形をしている。これがターゲットの色が灰色になってくると、ぐっと見えにくくなる。背景とターゲットの明度の関係はアパレントコントラストと呼び、このコントラストが小さくなるに従って、視力は落ちる。具体的にはターゲットが明るい灰色になるに従い、すなわち反射率が高くなるに従い、視力が落ちてきて、反射率0.29の灰色ターゲットでは視力は0.05になると報告されている。ちなみに黒色ターゲットの反射率は0.01。
 もう一つの大きな要因は明るさ。照度170Lx以下では視力に影響があり、照度が小さくなるに従って視力は落ちてくる。この実験では40Wの蛍光灯を使い、水深30cmの地点で約500Lxだった。太陽光は晴天では数万Lxの照度があるが、濁った水の1m底では100Lx以下にはなっちゃうかな。

 さて実際にルアーを水底で泳がす場合、このコントラストと照度の問題により、魚の視力は更に落ちてくる。中村の実験は白地に黒のターゲットだったが、湖でこんなにくっきりとしたコントラストを作ることはまず無い。いくら良くても実験で行われた灰色でのコントラスト程度。ほとんどの場合はそれ以下だろう。とするとこの場合の魚の視力は、0.05以下となる。
 さらに水底の照度は、水深が深まるに従って急激に低下する。水の濁りが強ければなおさらである。例えば上で相模湖くらいなんていいかげんなことを言ってしまった光束消散係数:3.75の場合、地上の照度が5000Lx(曇り空)だった時、水深ごとの照度は1mで2000Lx、4mで160Lx、5mでは70Lxとなる。4m以下では魚の視力は急激に落ち込んでくることになる。魚の視力を考えれば、水の濁りと水深により使うルアーの色、特に明るさを変える必要がありそうだ。

と言うことで、本日の結論。
(1)魚の視力は清水の中で0.11。つまり近眼である。それでも十分な明るさのある3m以浅の水域なら、50*15mmのルアーを9m先から見つけられる。
(2)濁りのある湖の水深4m以深を狙うときには、ルアーの明るさを考える。背景とのコントラストを大きくしないと魚からは見えない。

5.稚魚の生息範囲

                             (平松、大阪府淡水魚試験場業務報告 H5年)

 本文献は大阪府内を流れる淀川流域における、河岸の種類別に魚類の生息数を調査したものである。調査は8月上旬、中旬の2回行われ、河岸の種類毎に複数のサンプリング地点から、魚類の生息数の他、水温、流速等について調査が行われた。河岸の種類は下記および図1に示す6種類であり、そこにおいて採集できた魚類の種類、匹数を場所毎、時刻毎に整理している。
 A.開けた泥岸
 B.樹木の生え込み
 C.アシ、ヨシ原
 D.岩場
 E.コンクリート護岸

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採集された魚は主に以下の4種であり、サイズ的には稚魚または小魚と呼んで良い。
 a.オイカワ、ハス・・・体長6~7mm
 b.タナゴ ・・・ 6~7mm
 c.メダカ ・・・ 8~11mm
 d.ヨシノボリ ・・・ 9~14mm
大きさからいって、直接バスのベイトになるかについては、意見の分かれる点であろう。が、稚魚は成魚にある程度連動して生息しているものと考えられることから、バスフィッシングに大きなヒントを与えてくれるであろう。

 結果を表1に示す。結論を言えば圧倒的に、樹木の陰が安定して多くの魚をストックしていた。平松はその原因として、樹木が小魚の生息に適した遅い流速域を生み出すこと、水中の枝が格好の隠れ家になっていること等を挙げている。これについては我々バサーも過去の経験から十分納得がいく。実際、樹木が水没した、あるいは樹木のたれ込んだ場所はバスにとって一級のポイントになっている。
興味深いのはその次である。なんとアシやヨシの茂る河岸や、ごつごつした岩原をおさえて、開けた何もない泥岸がNo.2にランクされているのだ。これはおそらく稚魚にとっての補食対象であるプランクトンや小さな水生動物が、多く泥岸に生息していることによるものであろう。

表1 タイプ別に見た岸辺の稚魚生息密度、体調、出現魚種
生息数

 バスフィッシングにとって開けた泥岸は、いわば最も敬遠されるタイプの岸である。いわく、バスはハードボトムを好むだの、何らかのストラクチャーが必要だの・・・。あなたが朝一番のゴールデンタイムにバスを狙うとしたら、どこになるかを思い出すまでもないだろう。しかしベイトフィッシュの生息域という観点から見ると、実は我々は確認もせずに一級ポイントを見過ごしていたのかもしれない。バスが積極的にフィーディングに出ているような季節、時間帯には、泥岸は真っ先にチェックを入れるべきポイントになりうるのである。

 さらに平松は、これら小魚の時刻毎の分布についても触れている。それによると日中は岸から1m以内の何物かの陰に多く分布し、日没後はワンドの奥などの水の淀み、あるいは逆に沖の水深の深い底部に移動する。またコンクリート護岸に見られる小魚群は、非常に移動性が大きいことも確認された。
この情報もまた、我々に大きなヒントを与える。いきなり河岸、湖岸に立ってのアプローチがどれほど愚かなものであるか、ベイトフィッシュとバスの所在を考えれば明白である。またコンクリート護岸に回遊性の稚魚が多いということは、同様の環境といえる人造湖における切り立った岩盤等にも当てはまるであろう。バスのスクールがこういった地点を回遊しているのを目撃したバサーも多いと思うが、これも上記の稚魚の行動と無関係とはいえない。

 次に各河岸の種類毎の魚種については、オイカワ、ハス、タナゴ等のいわゆるシャッドが各河岸に平均的に生息しているのに対し、ヨシノボリは砂岸または樹木のある岸に限定されていた。
また水温は、コンクリート護岸がもっとも高く、樹木のある岸、岩場が最低となっている。これは各河岸での水深、流速にも関係するが、コンクリート護岸は調査ポイント中、最深であるにも関わらず、水温は高い点が注目される。

以上、バスにとってのベイトとなる小魚の生息場所から、ポイントを考えてきた。もう一度まとめてみよう。

(1)樹木の立ち込みは第1級ポイントである。しかも岸から1m以内のブッシュの奥にル アーを送り込むことが重要。
(2)バスがフィーディングに出ている時間には、泥岸も貴重なポイントになりうる。ベイ トフィッシュも捕食していることをイメージしてルアー操作する。
(3)コンクリート護岸、岩盤には居着きのベイトフィッシュはいない。逆に回遊性のベイ トを意識してゲームプランを立てるなら、これらのポイントはキーになりうる。
(4)マッチ・ザ・ベイトは岸の種類により使い分ける。ハゼ類はアシ原や岩盤にはいない。シャッド系はオールマイティに使える。
(5)コンクリート護岸の水温は上がりやすく、樹木のある岸、岩場は上がりにくい。水温 を考慮したポイント選択の参考となる。

 もちろんその河川湖沼の特性や、季節・天候で魚の行動は大いに変わってくるだろう。通いなれたフィールドで自分だけの秘密を持ち、それを頼りに釣りを組み立てるのももちろんあり。しかし初めてのフィールドで地図を頼りに推理を巡らせることは、より深い釣りの楽しさを教えてくれる。
俺はそう思うよ。
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