FC2ブログ
プロフィール

ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

43.環境DNAによる水生生物調査

前回「42.湖の水コップ一杯でそこに棲む魚が分かる!」に引き続き、環境DNA分析と言う新技術に基づいた調査について取り上げる。今回は国内の河川湖沼における調査結果の例を紹介したい。

(1) 江の川における環境DNA分析を用いたアユの定量化と生物量に影響を与える環境要因の検討
(乾ら(山口大学),土木学会論文集B1 vIL73,No4, 2017)

山口県の江の川上流域の複数個所からサンプリングした水により環境DNA分析を行い、場所毎のアユの生息密度を求めた。これとオオカナダモ等の環境に影響を与えると思われる外来種との関係を求めた。また溶存態無機窒素、リン等の濃度や標高、流速、水深等も測定された。
観測箇所は全19か所。これを従来の方法で調査したと考えたら、とてつもない時間と労力が必要だっただろう。環境DNA分析開発の効果は絶大だ。

43-Fig1.jpg
右上が下流となる(標記乾らから引用)

調査結果によるとアユのDNA濃度は上流ほど、標高が高くなるほど大きくなる傾向が見られたが、流量や水深とは無関係。そして最も注目されたオオカナダモの被度(どのくらい水面が覆われているか)とも無関係であることが判明した。
ヒステリックに外来種撲滅を叫ぶ集団にとっては冷や水を浴びせられた格好になってしまった。


(2) 在来希少種カワバタモロコの環境DNAによる検出系の確立
(福岡(神戸大学)ら,日本生態学会誌 66 ,2016 )


福岡らは、レッドリスト登録されている在来希少種カワバタモロコについて、兵庫県内のため池における生息確認手法として環境DNA分析が応用可能であるかの検討を行った。
兵庫県内にはため池が40000以上あるが、その内カワバタモロコの生息が確認されている池はわずか30しかないと言う。それらの真偽確認が大きな目標となる。

福岡らは人工的に作ったサンプル池での確認実験を経て、カワバタモロコ生息確認方法として環境DNA分析の有効性を確認した後、フィールドワークとして下図の81地点を選んだ。
43-Fig2.jpg

その結果を下表に示す。カワバタモロコのDNAが検出されたのは、宝塚市で1か所、神戸市北区で2か所等の計6か所のみ。それら6か所について実際にわなを仕掛けカワバタモロコの捕獲を試みると6か所中の5か所からカワバタモロコが捕獲された。
残りの1か所については追調査が必要だが、環境DNA分析はカワバタモロコの生息調査に有効であると結論づけられた。

43-Table1.jpg

上記の乾らの調査と同様にここはもう一歩踏み込んで、影響が疑われるオオクチバスブルーギルの生息の有無を同時に環境DNAにより分析してほしかった。
サンプリングしたDNAは1週間ほどで紫外線等により分解されて再調査不能となるため、同時に狙いを定めた分析が必要となるのだ。


(3) 環境DNAを用いた山口県内2級河川におけるヌートリアの侵入状況と生息適地の把握
(赤松(山口大学)ら,応用生態工学21(1) ,2018 )

赤松らは山口県内20水系87地点を対象に採水し、環境DNA分析によるヌートリアの生息調査を行った。その結果を下図に示す。

43-Fig4.jpg

既に調査地域20水系のうち14水系にヌートリアは生息していたのだ。
このような調査は環境DNA分析ならでは可能となるものだろう。従来方法で「ここにはヌートリアは一匹もいない」ことを証明することの困難さは容易に想像できる。
またヌートリアのDNAが高濃度に検出された地点の写真を見ると、コンクリート護岸ではなく植生を持つ川岸であることが分かった。岸に穴を掘って巣を作るヌートリアの生態と合致する。

43-Fig3.jpg

このように環境DNA分析は急速にその応用範囲を広げていて、今後様々な分野で活用されるだろう。個人的には、
・在来種生息数とバス・ブルーギル生息数の相関調査
・国外外来種の未侵襲湖沼の確認と保護(特に北海道)
・琵琶湖等で行われている外来種撲滅作戦の効果の程

なんてのをやってほしいな。

42.湖の水コップ一杯でそこに棲む魚が分かる!

環境DNA分析の野外調査への展開

なんともすごい世の中になったもんだ。DNA分析のことである。
思い返せば、人のDNA配列を解明しようという壮大な計画:ヒトゲノム・プロジェクトがアメリカで開始されたのが1990年。元来15年で解析する計画だった30億ドルを掛けた大プロジェクトは、結局たった10年で全DNAの解析に成功する。30億塩基対の配列情報の解明には、国際的な研究協力と、急激な解析方法の進歩が必要だったが、研究者達はそれを成し遂げ、今や誰でもネット経由でその情報にアクセスすることができる。
京都大学化学研究所ゲノムネット
  https://www.genome.jp/ja/about_ja.html


そしてDNA研究はあらゆる生物の情報解析に向かう。ネズミもトリも魚も虫も。そこにはフナやウグイやバスも含まれている。その最先端の一つが「環境DNA分析」。例えば魚からは分泌する粘液や糞等の排泄物に、それらのDNAが含まれている。犯罪捜査ドラマでおなじみの、唾液の付いたコップから犯人のDNAが抽出できるという、アレである。
そしてそして、今やその精度は、湖のコップ一杯の水からそこにどんな魚が住んでいるかを推測できるレベルになったのだ! 採取した水に含まれるごく微量のDNAを濃縮し、分析に足る濃度に高めた上で塩基対配列情報を策定していく。

<研究最前線>魚を獲らずに生態調査!「環境DNA」が注目される理由
https://m-hub.jp/biology/1670/93-1


すごいでしょ。コップ一杯の湖の水からそこに住む魚種や大まかな生息数が推定できる。
上の記事に登場する龍谷大学 山中氏の標記研究を見ていこう。
環境DNA分析という手法が登場したのは2008年、まだ生まれてから10年の若い技術だが、その応用範囲は急激に世界レベルで広がりを見せている。欧米では主に外来種の同定に応用されており、フロリダ湿地帯でのビルマニシキヘビ検出や、イギリスでのウシガエル検出が行われた。逆に希少種の生息確認を目的として、日本国内でオオサンショウウオやカワバタンモロコの検出が行われた。分析は湖沼・河川が中心だが、海の沿岸部においても数々の調査研究が進められているのだ。

その手法はあっけないくらいにシンプルだし、分析装置も巨大で高価なものとは思えない。いや、本当は素人には分からない複雑で高い技術を要するものなのだろうが、下に表されている手法はまさにあっけない程だ。

分析手法
                (標記 山中らから引用)

DNA分析のための詳細な手法を著者は本論文で紹介しているが、ここでは説明は避ける。第一、私がちゃんと理解できていないし。いずれにせよ上図のどの方法でも用いる装置は小さくて、複雑そうには見えない。そこがいいんだろうね。

だからこそ急激に環境DNA分析が世界中に広まったのだろう。著者の紹介紹介している論文だけでも2015年だけで約30件、その対象はブルーギル、コイ、ブラウントライト、アブラハヤ、ハクレン、etcetc。実に多様だ。そこでは水生動物だけでなく、陸生の動物の糞が河川に紛れて検出される例もある。
このようにして、その地に何が生きているのか生きていないのか、大げさな捕獲作戦を展開する必要もなく把握できる。特に今まで「生きていない」ことを証明することは容易ではなかった。いわゆる悪魔の証明だ。ネッシーは絶対にいないことを証明するためには、ネス湖の水を全部干さねばならなかったのだ。ロンドンブーツ、やってみる?
これが環境DNA分析の登場で一変する。例えば吉野川水系にニホンカワウソが生息していないことは、ニホンカワウソのDNA解析結果と比較すれば、吉野川の水コップ一杯で証明されるのだ。例の対馬のカワウソがニホンカワウソではなかった件は、糞を直接分析したので環境DNAとは呼ばない。

じゃあネッシーは? ネッシーのDNAが入手できれば一発だよ。誰か採取してきてくれる??
真面目な話、ネス湖の水に含まれる環境DNAが全て既知の生物のものであり、他の謎の生物のDNAが検出されなければ、謎の生物すなわちネッシーはいなかったと証明できるだろう。それも大変だろうけど。。。


では次回、日本で行われた環境DNA分析の結果を、何例か紹介していこう。
バスリンク
バス記事満載、釣りブログはこちら
にほんブログ村 釣りブログ バスフィッシングへ
にほんブログ村 釣りの世界
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム
検索フォーム