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ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

37.琵琶湖南湖のディープが大変なことになっていた

(寺島,上田;Jap. J. Limnol. 43, 2, 81-87, 1982.)

前回の「36.琵琶湖ディープホールのバスはサスペンドする」で琵琶湖のディープホールの事を取り上げたが、琵琶湖の湖底ではとんでもないことが起きていたようだ。
実は私自身は琵琶湖のディープの釣りというものを経験していない。だが文献を紐解いていくと、数々の琵琶湖の危機的状況が見えてくる。

京都大学の寺島らは、琵琶湖南湖の浚渫跡湖底における生物の変化に着目し、浚渫が水質及び底生生物にどのような影響を与えてかを調査した。調査地点は前回と同じ琵琶湖南湖矢橋帰帆島沖の浚渫跡窪地である。

37-Fig1.jpg

改めて湖底のプロフィールを見ると、ものの見事に12~13mで削り取られている。この浚渫は人口の埋め立て地である矢橋帰帆島(Fig.1 A.L.)を作るために行われたもの。その着工は1978年、完成は1982年だった。ついこの間だ。
琵琶湖にはこの他にも多数の埋め立て地が存在し、それらは湖底の浚渫により造成されたものだ。すなわち琵琶湖の湖底は穴ぼこだらけなのだ。その様子は孝橋(琵琶湖博物館)らによって測定されており、下図のように複雑なホールが多数存在する。これは南湖中央の琵琶湖博物館の沖合、志那沖から下坂本沖の2500mを魚探により測定したものだ。

37-Fig2.jpg

なんと凹凸が激しく、いかにもバスの潜むストラクチャーになりそうなものだが、事はそうは単純ではない。前回と同様、これらの浚渫跡も低酸素化が進んでいるのだ。

寺島らの論文に戻ろう。下図では前回文献と同様、6月初から8月末まで、湖底は酸欠状態となっていることが示されている。
浚渫跡の水深がある水域において夏季に水温躍層が形成されれば、上下層の水循環が妨げられる。加えて冨栄養状態である南湖水域では、微生物による分解が進み酸素を消費することにより低酸素状態となる。
一方、より水深はあるものの貧栄養状態にある北湖では低酸素化は発生せず、北湖盆の水深60~80mの湖底でも酸素飽和量は40%まで低下するにとどまる。
たかだか水深10~15mの湖底での低溶存酸素化は南湖の浚渫跡に特有の現象なのだ。

37-Fig3.jpg

ではその南湖浚渫跡の低酸素化は生物にどのような影響を与えたか。寺島らは湖底の生物を採集して分析を行った。
浚渫跡水域の底生動物ではユスリカ類、貧毛類が優占するが、6月の無酸素層形成と共にユスリカは見られなくなり、10月下旬から再び採集された。貧毛類も同様に6月から10月まで、一部期間を除き採集されなかった。一方、ユスリカ類、貧毛類は他の水域では夏季も採集されている。
さらに他の水域では採集された腹足類(タテヒダカワニナ等)や斧足類(ドブシジミ等)も、浚渫跡では通年にわたり採集されていない。
また浚渫跡湖底は低酸素状態となるだけでなく、窒素・リン重金属類等が湖底水中に大量に蓄積されている。これらが秋以降の水温成層の消滅に伴い湖全域に拡散されることで、湖全体の生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されているのだ。

琵琶湖南湖の惨状が伝わったであろうか。バス釣りに興じている人間として知る琵琶湖は1980年以降の琵琶湖だろう。すなわち矢橋帰帆島沖は造成されており、同時にディープホール等の浚渫跡も多数存在していた。
加えて琵琶湖周辺に無数に存在した内湖も、ほとんどは埋め立てられた後で、多くの流入河川は直接琵琶湖へと流れ込んでいる。かつての内湖は流入河川の汚濁成分の沈殿池として機能していた。なので当然、内湖の水は次第に汚濁が激しくなり、ついには住民や行政が埋め立てに動く。その後どんな事が起きるかは容易に想像できただろうに。
さらに野洲川等の河川改良工事、南湖沿岸の改修という名のコンクリート化
結果、流入河川の汚濁水は直接琵琶湖に流れ込み、湖水を浄化するはずの水草は根こそぎ排除された。そして現在まで続く赤野井湾に代表される南湖の状態を作り出した。当然の帰結だ。


これが世界に20しかないと言われている、10万年以上前から存在する古代湖の一つである琵琶湖の現在の姿だ。おそらくはそれら古代湖の中でも最も悲惨な状態にある湖と言えよう。

在来種が少なくなったのはバスのせいだとか、責任転嫁している場合ではない。いや、だからこそ逆に我々バサーは、なお一層環境保全に留意しなければならない。

自分が来た時よりも綺麗な湖にして帰る。誰もがそんな意識を持ち続けなければ、大切な湖の命を奪うことになる。そう心に刻もう。
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