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ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

44.バスの遊泳能力はどれほどなのか?

Convenient Analysis of Swimming Mechanism of Largemouth Bass Using Digital Video Cameras
( Matsunaga(近畿大学)ら,Fisheries Engineering VoL 41 No, 3, pp.245-250, 2005 )

これまでも「※1 バスの遊泳能力はアユに及ばない」とか、「バスは長距離を早く泳げない」などと書いてきたが、本当にバスの遊泳能力は他の魚より劣っているのだろうか。本研究ではバスの遊泳能力をデジタルビデオカメラで観察することにより解き明かしている。

※1 例えば「9.琵琶湖野田沼周辺におけるオオクチバスとブルーギルの胃内容物と糞中DNAによる摂餌生態の推定

近畿大学のMatsunagaらは、オオクチバス通常状態での遊泳(Steady swimming)と、瞬間的遊泳(Burst swimming)のメカニズムをデジタルビデオカメラにより解明した。

実験ではオオクチバス9匹(体長 11.0~25.5cm)をサンプルとして実験水槽に人工的な流れを生じさせた状態で遊泳させ、デジタルビデオカメラにより撮影した。実験水槽での流速は 0.14~0.57 m/sec。この速度でサンプルのバスは一定時間泳ぎ続けており、泳ぐバスの尾びれの振動数と振幅を測定した。

遊泳速度と尾びれの周波数の関係をFig.3に示す。図における各マークはサンプルバス別に支援しており、例えば●は体長11.0㎝、□は25.5㎝のバスのデータを示す。
遊泳速度の単位はTL/sec、ここでTLとは体長を示す。例えば最右上の●点は体長11.0cmのバスであり、4.5 TL/secであるから速度は
 4.5*11.0=49.5 cm/sec
を示し、その時の尾びれの周波数は8.2 Hz となった。
同様に最左下の□点は25.5cmのバスであり、遊泳速度は1.0 TL/secであるうから速度は
 1.0*25.5=25.5 cm/sec
を示し、その時の尾びれの振動数は 2.5 Hzとなった。□マークの最大値を見ると、このバスが振動数 5 Hzで尾びれを振った時で、その速度は 2.2 TL/sec、即ち
 2.2*25.5=56.1 cm/sec
これは実験における最高流速に他ならない。

44-Fig3.jpg
Fig.3 (標記文献より)

この遊泳速度:vと尾びれの振動数:TBFの関係を線形近似すると、
 TBF=1.21*1.66V
となる。

流速を増していくと、バスは定常的な遊泳状態を維持できなくなり、早い泳ぎと定常遊泳を繰り返すようになる。この境界域は 1.88±0.24 TL/secであった。イメージできるだろうか。流れに乗り遅れまいと何回か尾びれを激しく振ってから、またゆったりとした泳ぎに戻る事を繰り返すのだ。この特性は多くの魚種で観察される。
1.88 TL/secは11.0cmのバスでは20.7cm/sec、25.5cmのバスでは47.9cm/secに相当する速度である。

このような状態はバスにとっては居心地がいいとは思えないので、バスはこの境界域以下の水流にいたいのではないか。すると30cmのバスなら30*1.88=56.4 cm/sec 以下の流速の水域を好むと考えられる。そして大きなバスほど早い水流に対応できることになる。


次に同実験における遊泳速度と尾びれの振幅の関係を求めた。Fig.4に示すグラフでは遊泳速度と尾びれの振幅に強い相関関係は表れていない。これは南洋マグロでも確認されており、これらの魚では遊泳速度は尾びれの振動数に強く相関している。

44-Fig4.jpg
Fig.4 (標記文献より)

次にバスの捕食時の瞬間的な遊泳速度を測定した。
試験水槽に餌を投入した際には、バスは急激な遊泳(Burst swimming)を示す。その時の遊泳速度の時間変化をFig.6に示す。サンプル魚は体長17.0cm。餌である金魚にアタックする時には最大5.8 TL/sec=98.6 cm/secの速度で瞬間的に泳ぎ、その際の加速度は11.0m/sec2であった。しかしその高速遊泳は瞬間的でありせいぜい0.5sec、餌を捕食した後は再び餌が投入させるまで定常状態に戻る。Fig.6中の↓は餌の投入時刻、↑はバスのアタック時刻を示す。餌は繰り返し投入されたが、バスは餌の投入に驚いて瞬間的に強く遊泳した後、2~5sec後にアタックしている。

44-Fig6.jpg
Fig.6 (標記文献より)

バスはパイク等と同じく、Ambush predatorと呼ばれる。直訳すれば「待ち伏せする捕食者」(なんかカッコ悪いな)。Ambush predatorは通常はストラクチャの陰に潜み、餌が近づいてきた時に瞬時に高速で泳ぎ餌を捕食する。しかし持久力はない。
ここでのサンプルは17.0cmという子バスだったが、定常遊泳の観察結果で表れているような遊泳速度とTLとの関係が、瞬間速度でも成り立つと仮定すれば、40cmのバスは瞬間的に
 5.8*40=232 cm/sec
の速度でアタックすることになる。0.5secの一瞬の動きであったとしても、116cmは移動することになる。

瞬間的な速度についてはピンとこない処もあるだろうが、ウサイン・ボルトの初速が4.01m/secと言ったらどうだろう。バスはボルトの1/5の小さな体でボルトの半分以上の瞬間速度を叩き出しているのだ。しかも水の中で。
では水泳の世界記録はと言うと、50m自由形で 20.91sec。この時の平均速度は239.1cm/sec。40cmのバスは2m近い大男達と同じ速度を出すのだ。でも彼らは飛び込んでいるから。静止した状態から壁キックもなしで加速しろと言ったら、とてもじゃないが瞬時に239.1cm/secなんか出る訳がない。
バスの瞬発力はもの凄いのだ。


では、これらの情報を釣りのタクティクスに落とし込んでいこう。

我々がバスのアタックを目撃するのは、主に見えバスがルアーに気づいて近づいてバイトする場面だろう。その時のバスはゆっくり近づいてパクっと食いつく感じだ。思うにあれは本気の捕食のためのバイトではない。いわゆる「口を使う」状態。人間であれば「なんだこれは」と手を伸ばした状態なのではないだろうか。
Ambush predatorの本領は、バスに気づかずに近づいてきたベイトを一瞬でアタックする時だろう。その時のバスは上記のように2m/secの高速で瞬間的に遊泳し、大きな口を開けてベイトを吸い込む。その移動距離は1m近くなる。
この移動距離については別途検討したいが、ルアーとしてはそこまで想定した動きをすることだろう。つまりバスが潜んでいると思われるポイントの1m以内のレンジでは、いつバスがアタックしても不思議はない。そのつもりで操作する。逆に多くのプロがやっているような、ポイントにダイレクトにルアーを落としていく方法はいかがな物だろう?fig.6でも生き餌投入の瞬間、バスは驚いて瞬間遊泳を行っている。もちろん試験水槽内と実際のフィールドでは異なるだろうが、無用な刺激を与えないに越したことはない。少し離れたところに着水させてから、ポイントに近づけるというアプローチが可能であるならば、そうした方法を取る方がよいと考える。

もう1点。クランクベイトやスピナーベイトを操る時のイメージについて。あなたはどのようなイメージをしているのか?泳いでいるベイト(すなわちルアー)にバスが後ろからついて泳いできて、どこかでたまらなくなって後ろからガブリとやる。そんな感じでしょうか。
前述のようにバスはAmbush predator。通常はそんな捕食の仕方はしない。自分の潜んでいるストラクチャーの近くに来たベイトに瞬時に襲い掛かるのだ。

ちなみに多くのリールの巻き上げ速度は70cm/1回転。ルアーの移動速度は意識しながら操作していると思うが、Fig.3で表された定常遊泳速度は最大でも50cm/sec程度。皆さんの操作しているルアーは、バスにとってはかなり早いのかもしれない。バスプロもよくやっているよね。最初にサーチすると称してスピナベ等を早いリーリングで泳がせている。リールの回転速度は毎秒2回転くらい。あれでバスが掛かった処をまず見ない。掛かったとしてもただのラッキーだろう。そんな速度で後ろから長距離を追跡してアタックできるバスはいない。アタックしてきたのは、その近くにたまたま潜んでいたバスが、下からバイトしたのであろう。

このようなバスのベイトに対する捕食形態については「11.コクチバスによって捕食されるウグイの最大体長」で述べているので参照されたし。

バスの捕食形態から考えれば、引き物系のルアーは、バスの潜むストラクチャーに絡ませるのが必須条件となる。潜んでいるバスに近づいてしまったベイトのイメージ。ならばストラクチャまでのルアーの移動は迅速でいい。ストラクチャー近くでもバスのアタックスピードを考えれば、そんなにゆっくりリトリーブする必要もない。そこはその日のバスの反応次第だ。
そうではなくオープンな水域にクルーズしているバスを掛けたいのなら、バスの定常遊泳速度を意識したスローリトリーブが必要になる。かなり遅いよ。リール操作は毎秒1/2回転くらい。


どのような状態のバスをどう釣りたいのかによって、ルアーの操作法が違ってくる。当たり前の事がこのような研究から明らかになるのだ。
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