プロフィール

ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

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17.「魚は傷みを感じるか?」 分析編 - 2

さて 16.「魚は傷みを感じるか?」 分析編 - 1 において、魚にも侵害受容があることは分かった。それを魚は「痛み」として感じているのか、筆者のヴィクトリア・ブレイスウェイトはどのように確かめたのか?
人でも動物でも、痛みあるいはストレスを感じている時には、脈拍が高くなるし、食欲も落ちる。魚もそうであろうと仮定した筆者は、以下のような実験を行った。
1)まず魚にエサを与える時に習慣をつけた。水槽に入れたマスに、エサを与える前にランプを点灯し、ランプの箇所にエサを投入する。これを繰り返すと、数日後にはマスはランプが点灯すると、そこに近付いてきてエサの投入を待つようになる。
2)その習慣付けが済んだマスを複数匹用意し、4つのグループに分けて1匹ずつ個別に試験水槽に入れる。グループとは、
 a. 何もしない
 b. 食塩水を口に注射する
 c. 酢を口に注射する
 d. ハチの毒を口に注射する
3)a~dを施す際には、マスに麻酔をかけてから注射し、素早く水槽に戻す。

魚の脈拍を非侵襲で測定することは難しいので、脈の代わりにエラブタの動く回数を観察し記録した。すると実験前には平均すると毎分約50回動いていたエラブタが、aとbのマスは試験直後には70回程度まで増加した。そして60分後には50回に回復した。(1時間もかかるんだ!) 一方、cとdのマスは試験後のエラブタの動きが90回にまで上昇し、3時間半を経過してようやく平常時の50回に戻った。
そしてランプに対する反応では、aとbのマスは80分後にはランプにつられてエサを食べに来たが、cとdではやはり3時間半が経過するまではランプが点いても反応を示さなかった。
これはマスが、酢やハチ毒に対してストレスを感じていることの証である。ただし筆者はまだ、それが「痛み」であると断定してはいない。もう一歩検証を進める必要があった。


人は痛みを感じていると、それに気を取られて注意力が低下する。どうやら魚も同じらしい。筆者は上記のbとcでの実験を再び行い、そのマスたちの水槽に色鮮やかなレゴブロックを投入してみた。すると実験前のマスはレゴを回避して近づこうとしなかった。しかし実験後のcのマスは、レゴをほとんど気にせずに泳いでいた。実験後のbのマスは回避したと言うのに。これは酢の刺激によるストレスが、マスから注意力を奪ったと考えられる。
ではこのストレスは痛みなのか。筆者は鎮痛剤としてモルヒネをマスに投与し、その影響を見た。するとb,cとも注射と同時にモルヒネを投与した場合には、実験前と同様にレゴを回避する行動を取った。モルヒネによりcのマスは「痛み」を感じることがなくなり、平常な行動を取ったと考えられる。

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ここまでで、魚は刺激に対して「痛み」を感じていること(少なくともモルヒネにより緩和される「何か」を感じていること)が証明された。ではさらに進んで、魚はそうった「痛み」を強く「意識」し、苦しんでいるのだろうか。そもそも「意識」とは何か?
筆者は魚の数々の能力を挙げることで、魚にも哺乳類と同様の「意識」を持っていると結論付けている。その能力とは例えば、
・餌付け時の習慣付けにより、迷路を記憶し辿ることができる。→油壷マリンパークで見たことがある。
・潮の引いたタイドプールに住むハゼの仲間は、海鳥に襲われると隣のプールに向かってジャンプして逃げるが、その時ハゼはタイドプールの位置を予め認識している。
ハタとウツボは共同で狩りをする。ハタが小魚をサンゴ礁に追い込んだ時、ハタの入れないような小さな穴に隠れた小魚を、ウツボが追い出しハタが捕食する。時にはウツボがそのまま捕食することもあるが、その確率はほぼ1/2を示す。
     等々・・・

「意識」とは、「記憶に基づいた情報を描写する[アクセス意識] 」、「周囲の出来事を感じ取る[現象意識] 」、「自己意識と情報交換を可能にする[モニタリングと自己意識] 」の3つを指す。魚はこれらを兼ね備えており、何らかの形態の「意識」を持ち、よって痛みを感じる心的能力も持っている、と考えられる。


どう思います?納得できましたか?少なくとも問題提起としてはとても優れた本だと感じた。
釣り人という立場から見ると、いくつか指摘したい部分があり、例えば上で示した実験では、bのマスは注射で食塩水を注射されても平常状態を保っている。と言う事は、針掛りしただけでは痛みは感じていない、と解釈できる。実験では「化学的刺激」を与えた場合のみストレス反応を示したのだ。
釣りの上で興味深いのは、上記実験後60分間はa,bのマスも平常状態に戻らなかったこと。場を荒らしたら1時間は寝かさないと、魚は覚えているという事になる。参考になるね。

本書ではその後、魚に対する福祉について論じている。「釣れ釣れなるままに」で示した問題だ。この部分は各人が自分なりの咀嚼をして飲み込めばいい。俺は己の意見を押し付ける気はない。
 
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