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ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

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23.白樺湖における生物操作に伴う移入種オオクチバスの食性変化

      (河ら(信州大), 陸水学雑誌76:(2015) )

 今回の文献は俺的には色々な意味で衝撃的であった。長野県の白樺湖でも、お馴染のバス害魚論が展開されていたのだが、ここの場合はちょっと事情が違ったみたいだ。「生物操作」って?バスの食性変化って? そんなことが起こるし、そんなことをやっていたんだ。井の頭公園のかい掘り以上にショックだったな・・・
例によって私のコメントは青字で、文献の引用は黒字で示している。



 オオクチバスは魚食魚として知られているが、その食性には柔軟性があり、日本ではヨシノボリ類やワカサギなどの魚類に加え、エビ類、昆虫類など幅広い生物分類群への食害に関する報告がある。
 本研究で調査対象とした長野県白樺湖(36ha,最大水深9.1m)では、密放流によって1985年には既にその存在が確認されていた。白樺湖は1946年に農業用温水溜池として作られた人造湖であり、生息する魚類は公式・非公式を問わずほとんどが放流によって定着したもものである。この湖では2000年に湖水の透明度改善を目的とした生物操作(Biomanipulation)が行われ、その前後で生態系構造が大きく変化した。具体的には、過剰に増えた植物プランクトンの増殖を抑制するため、大型ミジンコ類のカブトミジンコ(Daphnia galeata,体調1.5㎜程度)を放流した。また生物操作以前に数多く生息していたワカサギがカブトミジンコの増殖を抑制することから、ワカサギの捕食者としてニジマスの稚魚5000~8000尾を2000年から2003年まで毎春1回放流した。
 白樺湖の透明度は生物操作実施当初、平均2mだったが、2005年には平均3mを越えるようになった。一方で沿岸帯では透明度の上昇に伴いコカナダモを中心とする水草帯が広がった。

 ここまでで既に4回ほど驚かされた。
1)あの高原に広がる爽やかな白樺湖が農業用溜池だったこと。
2)そこに生息する魚は全部放流だったこと。
3)そして、透明度改善のためにミジンコを放流したこと。
4)さらに、そのミジンコを食べるワカサギを減らすためニジマスを放流したこと。
「生物操作」何という不気味な言葉だ。Bio-manipulationだよ。その裏には恐らくアンブレラ社が暗躍しているに違いない。そしてその目的である白樺湖の水質改善は、別に湖の生態系を守ろうなどという高尚な目的のためではなく、恐らくは観光客目当てであった。ニジマス放流にしても釣り客の増加を見込んだものであることを、当事者自身が認めている。

文献を先に進めよう。


23-Fig_1.jpg

 オオクチバス等の魚類採集はSt.1およびその周辺を中心に1998年8月と2000年6,8,9月に計回行われた。オオクチバスについては個体を実験室で解剖し、胃内容物を取り出して顕微鏡下で観察した。胃内の餌生物を動物プランクトン,水生昆虫,ワカサギ,モツゴに分け、空胃率(VI)と餌生物ごとの餌料出現率 (%F)を算出した。
 
 生物操作後の魚類最終と食性の調査はSt.1,St.2の2地点において、2009年5月から10月にかけて隔週で行われた。オオクチバスの胃内容物の同定は可能な限り下位の分類群まで行ったが、最終的には6つ(カブトミジンコ,ノロ,ユスリカ類,その他水生昆虫,陸生昆虫,魚類)の分類率に分けた。また飼料個体数比(%N)、餌料重量比(%F)を算出した。
 
1999~2000年の4回の漁獲調査では、全長10cmを越える魚類が合計156体捕獲された。
 オオクチバス 80.1%
 ゲンゴロウブナ  5.8%
 コイ 3.8%
 ウグイ 3.8%
 ニジマス 2.3%
 イワナ 1.9%
 アマゴ 1.3%
 シナノユキマス  0.6%
一方、全長が10cm以下の魚類547個体では、
 ワカサギ 80.4%
 オオクチバス 12.4%
 モツゴ 6.8%
 ヨシノボリ類 0.4%

 生物操作後の2009年の漁獲調査では計100個体が捕獲された。そのうち99個体がオオクチバスで、残りの1個体はフナ類であった。

 おっと、放流したニジマスはどこに行ったんだ? 生物多様化どころかバスしかいなくなっちゃったじゃないか。目的のワカサギの絶滅(?)は果たしたようなので、当事者としては成功なのかね。
では、今回の主題であるバスの食性はどうなったのだろうか。


 2009年におけるオオクチバスの胃内容物の餌料重量比(%W)を図2に示す。

23-Fig2.jpg

 オオクチバス個体群の身体サイズ毎の餌料重要度指数(%IRI)を図3に示す。

23-Fig3.jpg

 餌料出現率(%F)が特に高かったのはユスリカ(幼虫と蛹)の91.8%と、カブトミジンコの83.7%で、ノロ(50.0%)や水生昆虫(48.0%)も比較的高かった。魚類は胃内から合計3個体観察された。

 いかがであろうか。生物というもののしたたかさ、強さが如実に現れた調査結果と言える。バスはベイトフィッシュがいなくなればエビや昆虫を、それさえいなければプランクトンを食べて生き延びる。これはおそらくバスに限ったことではないのであろう。でも Match the bait は難しいよ。ミジンコルアーを作るかい?

 そして結果的に生物操作なるものの成果が水質改善には現れたようだ。しかしここで生物学者と行政の手によって行われた事は、本来白樺湖には生息しないカブトミジンコとニジマスの放流という、国内外来種移植だったことを忘れないように。この辺の議論は生物操作が行われた2000年にNHKが放送で取り上げたことから盛んに議論されていたようだ。「生態メーリングリストJECONETの論議」に詳しく記載されているので、興味のある方はリンクを辿ってみられたし。

 他の記事でも書いたが、生態系保護なんて当事者の都合によっていくらでも読み替えることができるのだ。そしてそのあおりを食らうのはいつでも既にそこに生息している生物たちだ。
もういい加減にやめたらどうだ?
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