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ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

6. 魚の視力について

(中村,水中の濁りが魚の視力に与える影響に関する基礎的研究,東京水産大研究報告 Vol.76,Nos.1-2,1989)より

 魚の水中での視力ってどのくらいあるんだろう?
視角や色感覚については既に1.項と2.項で述べた通りだった。では視力は?人間のように視力1.5とか0.3とか言うんだろうか?実はちゃんと実験をした人がいる。
 魚の代表的な知覚は視覚、聴覚、触覚および嗅覚などであるが、ターゲットの近くでは視覚が圧倒的に行動を支配する。中村は水中の濁りと魚の視力およびターゲットの視認距離との関係を明らかにした。

monocro.gif


 実験にはコイを用い、水層に2カ所のゲートを設け、黒色のターゲットがある方のゲートにコイが来た時に餌を与えるように条件付けをした。図1に示した水槽が実験装置である。コイにこの条件付けを教え込むのに40日かかったそうである。40日しかかからないんだから大したもんだ。こうして条件付けしたコイが、どのくらいの大きさのターゲットまでを認識するかを、水の濁度を変えて実験していった。ターゲットの大きさは35~5mm。コイからターゲットまでの距離と、ターゲットの大きさからコイの視力が判定できることになる。人間の視力検査と一緒だね。その結果・・・
 コイの視力は、0.11。これが清水における結果である。かなりの近眼である。ちなみに他の研究者が測定した種々の魚の視力は、マハタが0.24、クロダイが0.14、金魚が0.05となっている。

 ところで視力とは何か知っています?
視力とは認識しうる最小のターゲットを見込む角度:θの逆数で表される。上のコイの実験では、コイは40cmの距離から最小1.1mmのターゲットを認識できた。これから計算されるコイの認識角度は9.5分(1分は1/60度)。この逆数が0.11になる。式を示せば
  視力:Ac=1/{120*tan-1(x/L)}
ここで、xは最小ターゲットの大きさ。Lはターゲットまでの距離。単位はmmに合わせること。tan-1はアークタンジェントを表す。

 視力がわかればある距離からどのくらいの大きさの物体を認識できるかが推察できる。このコイの場合、例えば50mmのものなら、18m先から認識できることになる。ただしターゲットの形は四角。ルアーみたいな細長いものはかなり割り引いて考えなければならない。まあ視力0.11の人に聞いた方が早いかな。でも以外に遠くから見えているんだよ。

 ただしこれは清水での話。容易に想像がつくように、水が濁れば見えにくくなってくる。中村は水の濁度を変えて、同じ実験を行った。水の濁り度合いは光束消散係数という値で表される。まあ光の届く割合と思っていい。この光束消散係数(単位は(1/m))を、清水の0.1から1.25,2.50,3.75と変化させていく。すると当然のように視力は落ちてくる。清水で0.11であった視力は、1.25,2.50,3.75(1/m)の水ではそれぞれ、0.10,0.09,0.07になる。ちょっとピンとこないけれど、相模湾の海水で光束消散係数:1.6、黒潮系水で約0.1だそうだ。すると光束消散係数:3.75は、相模湖くらいなのかなあ?北浦なんてどうなっちゃうんだろう。
 視力 0.07で計算し直すと、50mmのターゲットを認識できる距離は12mになる。仮にターゲットの面積が同じなら、同じ距離から認識できると仮定すると、50*15mmのルアーは6mから認識できることになる。同様に清水の場合の視力0.11なら、50*15mmのルアーは9mから見えている。

 ただしこの実験のターゲットは白地の上に置かれた黒色板であり、いわば最も見やすい形をしている。これがターゲットの色が灰色になってくると、ぐっと見えにくくなる。背景とターゲットの明度の関係はアパレントコントラストと呼び、このコントラストが小さくなるに従って、視力は落ちる。具体的にはターゲットが明るい灰色になるに従い、すなわち反射率が高くなるに従い、視力が落ちてきて、反射率0.29の灰色ターゲットでは視力は0.05になると報告されている。ちなみに黒色ターゲットの反射率は0.01。
 もう一つの大きな要因は明るさ。照度170Lx以下では視力に影響があり、照度が小さくなるに従って視力は落ちてくる。この実験では40Wの蛍光灯を使い、水深30cmの地点で約500Lxだった。太陽光は晴天では数万Lxの照度があるが、濁った水の1m底では100Lx以下にはなっちゃうかな。

 さて実際にルアーを水底で泳がす場合、このコントラストと照度の問題により、魚の視力は更に落ちてくる。中村の実験は白地に黒のターゲットだったが、湖でこんなにくっきりとしたコントラストを作ることはまず無い。いくら良くても実験で行われた灰色でのコントラスト程度。ほとんどの場合はそれ以下だろう。とするとこの場合の魚の視力は、0.05以下となる。
 さらに水底の照度は、水深が深まるに従って急激に低下する。水の濁りが強ければなおさらである。例えば上で相模湖くらいなんていいかげんなことを言ってしまった光束消散係数:3.75の場合、地上の照度が5000Lx(曇り空)だった時、水深ごとの照度は1mで2000Lx、4mで160Lx、5mでは70Lxとなる。4m以下では魚の視力は急激に落ち込んでくることになる。魚の視力を考えれば、水の濁りと水深により使うルアーの色、特に明るさを変える必要がありそうだ。

と言うことで、本日の結論。
(1)魚の視力は清水の中で0.11。つまり近眼である。それでも十分な明るさのある3m以浅の水域なら、50*15mmのルアーを9m先から見つけられる。
(2)濁りのある湖の水深4m以深を狙うときには、ルアーの明るさを考える。背景とのコントラストを大きくしないと魚からは見えない。
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