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ころた

Author:ころた
芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。師匠は常見忠、開高健(心の師匠ね)。吉田幸二よりは若い、ちょっとだけ。
30数年間の技術者としてのサラリーマン生活を終え、いまや悠々自適(と言うほど余裕はない)。技術者の悪い癖で理屈ばかりにやたらうるさい。当然、釣りも理屈詰めとなる。よって頼りにしたのは科学文献。文献検索を重ね魚類や湖、その植生などを紐解くと、出るは出るは面白情報の山。その一部をおすそ分けします。

HP復活から

8.オオクチバスの釣られやすさに見られる個体差

(日本水産学会 75(3),425-431(2009)  片野, 水産総合研究センター中央水産研究所)

 今回の論文はとっても分かりやすい。そして諸兄にはとっても興味深いものだと思うよ。その名の通り、バスの釣られやすさに関する研究だ。もちろんヘッポコバサーのホラ話じゃなくて、ちゃんと実験と解析に基づいた「論文」だ。心して聞いてくれ。
「ここのバスはすれちゃって、口を使わないよ。」
「先行者が叩いたポイントだから、少し休ませてからチェックしよう。」
 みんな分かったような分からないようなことを言うよね。バスに聞いたの? 今日はバサーが多くて落ち着かないって言ってた? 先週釣られて、もう二度と釣られないよ~って言ってた? 分からないでしょ。
 ほんとはどうなの? 一度釣られた魚は二度と針には掛からない? ちゃんと仮説を立てて立証した研究者がいるんです。理論に名前まで付いている。

 片野は、湖で捕獲したオオクチバスを実験池に放流し、それを定期的に色々な方法で釣って記録を残すという実験を行った。実験に用いたバスは、体長18~26cm、142~482gのオオクチバス65個体。この1匹1匹のひれの一部を切除し個体を判別できるようにして、40*5.3mのコンクリート池に放流した。場所は長野県上田市の中央水産研究所上田庁舎、実験期間は2007.9.3~10.1までの28日間。そして釣り人(筆者である片野)1名が1日おきに6時間釣りを行い、釣法毎に釣れた魚の記録をつけていく。釣法は4種類。
A.B. 餌釣り。8.5m渓流竿に道糸・ハリス1.5号がまかつ製ニジマス針10号。ミミズ(A)もしくはスジエビ(B)
C. ルアー釣り。ルアーロッド、ライン2号、DECOY製フック15-2 Gary YAMAMOTO Custom Bait 3.5” Kut Tail
D. 生餌釣り。ルアーロッド、ライン2号7~10cmのウグイ

 最後に試験池の水を抜いて全ての魚を回収し、再び体長・体重を測定する。
なんか楽しそうだよね。みんな水産研究員になりたいって思ったでしょ。でも仕事だから、仕事。さて、このようにして収集したデータを基に、解析・考察を深めていく。ここがヘッポコバサーと違うところ。

 Table.1を見てみよう。ここには1日おきに行われた採捕(釣りのことね)で各日に何匹釣れたかを示している。試験されたオオクチバスは1日に10~23回、実験期間中にのべ126回釣られた。2回目の採捕までは20匹以上釣られたが、3回目以降は7~14匹に減少。実験が進むにつれ釣られる個体が減少する傾向が見える。

table1.jpg

 Table.2には4回以上釣られた7匹についての釣法を示している。ミミズでは1回しか釣れず、生き魚が最も釣れている。ワームでは4回だった。2回目の採捕まではどの釣り方でも釣れたが、3回目以降はワームとミミズでは1匹もつれず、エビとウグイでのみ釣れた。126回中14回針の飲み込みがあり、この場合はハリスを切った。針の飲み込みによる死亡は認められず、同じ個体が2回飲み込むことも3例確認された。

Table2.jpg

 Table.3には全ての個体についての釣られた採捕回数を示している。片野はバスの釣られ方から個体を4種類に分類した。すなわち、注意深い個体(careful)、学習する個体(learnable)、釣りやすい個体(fishable)、その他 の4種だ。
Carefulは、一度も釣られなかったか、最終捕集日に1回だけ釣られた個体。Learnableは、実験開始後1回だけ釣られ、その後連続して釣られなかった個体。Fishableは、調査機関を通して3回以上釣られた個体。その他は、それらのいずれにも該当しなかった個体である。
 その結果、注意深い個体が8尾、学習する個体が10尾、釣られやすい個体が16尾、その他が31尾いたことになる。
 釣られやすさや学習の有無には個体差があると認められるが、3つのタイプの間で体長に有意差は認められない。すなわち、大きなバスが慎重であり釣られにくいという傾向は、この実験からは見られない
 同じ個体が1日に2回釣られることが3例あった。3回のうち2回は同じ個体によるもの。
実験期間を通じて釣られた回数は個体によって0~8回と大きくばらつく。1度も釣られなかった個体が4匹認められた。
 ここでは2度釣られた個体の、釣られたタイミングに注目したい。上記の通り1日に2度釣られちゃう奴もいるが、多くは1度釣られるとその後の採捕4~7回の間は釣られておらず、日数にして8~14日あけた後に釣られるパターンが多い。

Table3.jpg

 バスの社会も人間様と同じ、多様化しているんだよ。慎重な奴もいれば用心深い奴もいる。だからおもしろいんだ。バスフィールドでは今も基本的には Catch & Release が行われているので、この実験と同じような条件となる。
「ここはワームじゃなくてクランクでしょ。」
「Kut Tailよりもクローを試してほしかったな。」
言いたいことは分かるが、そこが主目的じゃないから。理解してね。でも釣られやすい7匹で延べ32回釣れている中で、ルアーでは4回しか釣れなかったというのが事実だ。やっぱりバスは主にベイトフィッシュを食っているんだよ。この事実は在来魚種への影響という観点では、考えねばならないことだろう。

 片野による考察に戻ろう。実験期間中の体重の増減は、-19.6~117.5gにばらついた。Fig.4には個体の体長と成長率との相関を示した。個体の体長と成長率の間は負の相関を示した。すなわち小型個体ほど成長率が高いという、魚類一般の傾向を示している。
 Fig.5には各個体の釣られた回数ごとの、試験期間中の体重増量(上図)と、体重増加率(下図)を示す。両者の間に相関は見られない。すなわち注意深い個体だから育ちにくいとか、釣られやすい活発な個体だから大きくなりやすいといった傾向は見られない。

Fig5.jpg

 釣りを続けると釣獲率の低下が個体群の減少よりも急速に起こる。この現象の理由として、Martinは、一つの魚群の釣られやすい個体が減って、釣られにくい個体が残るためという事を示唆した。これをMartin仮説と呼ぶ。今回の実験でも、仮に一度釣られた魚を池に戻さずにいたら、日を追うごとに釣獲率が下がったはずだ。Martin説は成り立っている。

 またBeukemaは、釣り針から逃げたり、釣られた後に再放流された魚は、釣られた経験を学習して針について餌を忌避するようになるという、学習説を唱えた。
 オオクチバスは全体として、学習により釣られにくくなったと言える。学習する個体がいる一方、学習せずに何度も釣られる個体や、そもそも用心深く一度も釣られない個体もいる。オオクチバスにおいてもBeukema説が当てはまる個体が存在すると言える。ただし全ての魚が該当する訳ではない。


 さて諸君、どう考えますか。1日に2回も針がかりする陽気なバスもいる反面、1回も釣られることのないバスも多くいる。そして1度釣られてしまうと、その後1,2週間は釣れないという傾向も見られる。我々が相手にする「標準的な」バスならば、やはり一度針がかりした魚は連続的には釣れない。それは自分が釣り損ねた魚ばかりでなく、土日に釣られた魚を次の日に釣ろうというのは難しい、ということを示している。
 妥当な結果といえばそれまでだが、ちゃんと実験と解析を通して得られた結論にはそれなりの重みがある。科学論文、やっぱりおもしろいわ。
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